鈍走記
竹内浩三の鈍走記を引用してみようと思う。鈍走なんていう言葉は無いが、運動はからっきしダメだった竹内浩三さんらしい言葉の響きがある。そして、浩三氏の紡ぎ出す言葉には推敲を一切しない氏の独自の力強さがある。
生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。
ただそれだけだ。
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日本語は正確に発音しよう。白ければシロイと。
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ピリオド、カンマ、クエッションマーク。
でも、妥協はいやだ。
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小さな銅像が、蝶々とあそんでいる。彼は、この漁業町の先覚者であった。
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四角形、六角形。
そのていたらくをみよ。
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バクダンを持って歩いていた。
生活を分数にしていた。
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恥をかいて、その上塗りまでしたら、輝きだした。
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おれは、機関車の不器用なバク進ぶりが好きだ。
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もし、軍人がゴウマンでなかったら、自殺する。
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目から鼻へ、知恵がぬけていた。
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みんながみんな勝つことをのぞんだので、負けることが余りに余った。それをことごとく拾い集めた奴がいて、ツウ・テン・ジャックの計算のように、プラス・マイナスが逆になった。
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××は、×の豪華版である。 注:戦争は悪の豪華版である。
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××しなくても、××はできる。 注:戦争しなくても建設はできる。
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哲学は、論理の無用であることの証明に役立つ。
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女はバカな奴で、自分と同じ程度の男しか理解できない。しようとしない。
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今は、詩人の出るマクではない。ただし、マスク・ドラマなら、その限りにあらず。
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「私の純情をもてあそばれたのです」女が言うと、もっともらしく聞こえるが、男が言うと、フヌケダマにみえる。
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注釈をしながら生きていたら、注釈すること自身が生活になった。小説家。
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批評家に。批評するヒマがあるなら創作してくれ。
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子供は、注釈なしで憎い者を憎み、したいことをする。だから、好きだ。
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おれはずるい男なので、だれからもずるい男と言われぬよう極力気をくばった。
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おれは、人間という宿命みたいなものをかついで鈍走する。すでに、スタアトはきられた。
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どちらかが計算をしはじめたら、恋愛はおしまいである。計算ぬきで人を愛することのできない奴は、生きる資格がない。
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いみじくもこの世に生まれたれば、われいみじくも生きん。生あるかぎり、ひたぶるに鈍走せん。にぶはしりせん。
「日本が見えない」藤原書店発行 小林察編より