『日本滅亡論』藤井聡著

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『日本滅亡論』を読んでみました今年初めの読書です。非常に刺激的な表題ですが、中身はもっと刺激的です。どうやら日本はこのままでは間違いなく滅亡するようです。恐ろしや。

『日本滅亡論』に書かれた日本の現状

『日本滅亡論』は、現状分析から始まります。既に周知となっていることですが、過去30年間給与所得者の給与は上がっていません。そして、大卒初任給では韓国よりも低い値です。また、下に見ていた中国では、人口の10%が日本円で一億円を超える収入を得ています。収入は30年間変わらずに、物価は上昇し、消費税は四度増税されています。そして、今年は森林環境税が新設され、相続税は生前贈与の非課税分が大幅に縮小されます。さらに、今後数年以内に防衛増税と自動車走行距離税が導入されます。その他、電気、ガス、水道、年金保険料、一部保険組合の健康保険料の値上げが予定されています。

進まない災害対策

近年規模が増している災害対策は遅々として進みません。しかし、南海トラフ地震は秒読み段階との研究結果もあります。そして、首都直下型地震も同様に、いつ来てもおかしくない状況です。しかし、スーパー堤防による水害対策はいつの間にか白紙化されました。おなじく、首都機能の分散についてもいつの間にか消えてしまいました。そして、南海トラフ地震が起きれば、その被害額は政府試算を大きく超えた1400兆円に上ります。いまでも日本の経済は瀕死の状況です。そこに、1400兆円の負債が出来れば日本は名実ともに滅亡します。

事の発端は1997年の国債発行規制

1997年に国債の発行規制が閣議決定されました。そして、赤字国債が無くなった分は消費税で補われました。しかし当時はまだ建設国債は規制されていませんでした。したがって、公共事業を行う体力は残されていました。しかし、後の小泉内閣ではプライマリーバランス黒字化が目標となりました。これによって、頼みの綱の建設国債も封印されてしまいました。これにより、公共事業は軒並みストップです。また、国鉄、道路公団、専売公社、電電公社、郵政は民営化されました。

そもそも民営には適していなかったから国営だった

民営化されたことで、不採算な鉄道路線は無残に廃線されました。そして、郵便料金は値上げされ、地方の郵便局は不採算を理由に次々と閉鎖されました。そもそも、国土に遍く公共サービスを提供する事業は、民営には適していません。そして、民営化されたことにより、地方では過疎化が進み、都市部に人口が注中する結果となりました。

新自由主義がこの国を亡ぼす – 『日本滅亡論』の要点

新自由主義は、政府の役割を縮小し、経済活動を民間に任せることが経済を発展させるという考え方です。そして、現在の政府と財務官僚は新自由主義派に占められています。新自由主義の実践により、一時は隆盛を極めていた半導体事業への助成金は打ち切られました。その結果、法整備の遅れも手伝って、台湾と比較して周回遅れの製造設備で細々と口に糊する始末です。そして、民間では行うことができない公共事業の凍結によって、自然災害への耐性は先細るばかり。

政府のアドバイザーに名を連ねる新自由主義者

『日本滅亡論』には、新自由主義者がこの国を動かしていると説いています。財務省の役人は新自由主義一辺倒の教育を受けた者に占められています。そして、政府のアドバイザーも竹中平蔵氏を始めとする新自由主義者が跋扈しています。ここで、今一度ジョン・メイナード・ケインズが『一般論』で唱えた、経済への政府の関与が必要です。

ケインズの『一般論(雇用・利子および貨幣の一般理論)』

経済が沈滞した時には減税や利下げを行い、公共事業で雇用を生み出します。そして、これらの費用は国債で賄えば良いのです。また、インフレが進んだ時には、増税と利上げを行い市場を沈静化させればよいのです。幸い日本は独自通貨を発行しています。そして、日本の国債は日本円でしか売買できません。これは、経済破綻したギリシャとは全く事情が異なります。ギリシャは独自通貨を持ちません。そのため、国債はユーロ建てです。利払いのためのユーロは輸出で稼ぐしかありません。そして、国債の利払いを支える輸出品が無かったため破綻しました。しかし、日本は最悪利払いに窮した場合に日本円を印刷すれば事足ります。もちろん、度が過ぎればインフレを招きます。しかし、そこは中央銀行の腕の見せ所です。

しかし、『日本滅亡論』の提言は受け入れられないでしょう

以上が本書の要約です。これを読むと、先行きはバラ色に思えてしまいます。しかし、現状はどう見ても日本は滅亡に向かって進んでいます。それこそ、財務官僚を再教育して経団連が一丸となって為政者に引導を渡さねば変わらないでしょう。そして、もし変わったとしても、本書に書かれているように上手くいく保証はありません。座して死を待つ。これが日本の未来です。残念ながら。