usb-dac(安物)は使い物になるのか?
チープなusb-dacを買いました。アリエクには、choiceというカテゴリーがあります。このカテゴリーの中から3点以上を選んで購入すると、1点あたり1.99ドルで購入できます。しかも、送料は無料になります。かなりお得に買えますので、度々利用しています。
そんなアリエクのchoiceで買ったusb-dacは、日本円で275円でした。
届いたのは高級感皆無のusb-dac
届いたusb-dabは、いかにもチープな佇まいです。そして、説明書は付属しません。また、本体にはメーカー名も型番も記載されていません。
すこし、不安を感じつつもPCのUSB端子に接続しました。すると、即座に認識され、使用可能になりました。
出力ビットレートは、44.1kHzと48kHzが選べます。しかし、通常は44.1kHzにしておくと良いでしょう。48kHzにすると、出力の高域側が制限されます。また、一定の周波数の信号にノイズが見られました。
チープなusb-dacは普通に鳴る、だけどちょっぴりハイ上がり
usb-dacに直接イヤホンを接続して鳴らしてみました。そして、普通に鳴ってくれました。心配していたノイズは全く感じられません。ただし、少しだけハイ上がりの感じで、低域が寂しい感じです。恐らく、出力側のカップリングコンデンサの容量が少ないのだと思います。しかし、この小さな筐体に大容量のコンデンサを収めるのは不可能ですから仕方がありません。
今回のusb-dacのように、出力インピーダンスが高い機器の場合には、ヘッドホンアンプを使うと良いです。インピーダンスマッチングをとることができます。これによって、見違えるほど音が良くなります。
安物usb-dacの実力を探る
いつものように出力波形を観察して、usb-dacの実力を見てみたいと思います。しかし、出力端子のインピーダンスが高めなので、負荷をかけた状態では可哀そうです。したがって、無負荷での計測としました。しつこいようですが、ヘッドホンやイヤホンを接続する際には、ヘッドホンアンプは必須です。
なお、usb-dacはPCのUSB端子に接続し、信号の出力にはAUDACITYというアプリを使用しました。
usb-dacの鬼門 – 矩形波出力
DACで矩形波を正しく出力するのは極めて困難です。その理由は、矩形波が奇数次の高調波を含んでおり、その多くがサンプリングにより欠落するからです。したがって、何とか矩形波を再現できるであろう2kHzを上限としました。
2kHz矩形波出力
矩形波らしく見えるのは2kHzが限界でしょう。その2kHzも立ち上がりが随分鈍っています。そして、信号が大きくうねっているのが分かります。これを見ると、デジタルオーディオは音が悪いという人の意見には納得します。
1kHz矩形波出力
2kHzの時よりは少しマシです。しかし、きれいな波形とはいいがたいです。やはり、1kHzという根幹となる周波数の波形ですらまともに再現できないのはデジタルオーディオの欠点です。
500Hz矩形波出力
周波数を500Hzまで下げて、ようやく矩形波らしくなってきました。しかし、波形の肩の部分にはオーバーシュートが出ています。この傾向は、今回使用しているような、ローエンドのDACでも、ハイエンドのDACでも出ます。これを回避しようとすれば、サンプリング周波数を上げるしかありません。しかし、これは音源データでの対処となります。したがって、どれだけ再生機器にお金をかけても改善できません。これがデジタルオーディオの悲しい宿命です。
100Hz矩形波出力
500Hzの時よりも更に矩形波らしくなりました。しかし、既に波形に右すぼみの歪みが出始めました。これは、DACの出力側にあるカップリングコンデンサの容量不足によって顕著になります。
10Hz矩形波出力
ここまで周波数を下げると、歪みが顕著になります。
usb-dacでの正弦波出力
正弦波は、矩形波よりも楽に再生ができます。これは、正弦波が高調波を含まないからです。その一方で、正弦波ではノイズの影響や、周波数による振幅の変化から周波数特性が分かります。
20kHz正弦波出力
残念な波形です。波形に細かな乱れが見られます。したがって、ノイズが乗っていると考えて良さそうです。ただし、ノイズの周波数は、かなり高そうなので聴感への影響は少ないと思われます。
1kHz正弦波出力
20kHzの出力波形で見られたノイズによる乱れは、ここでは見られません。
100Hz正弦波出力
きれいな正弦波です。言うことなしです。
10Hz正弦波出力
これも、きれいな波形が出ています。振幅の増減は10Hz~20kHzで±1dB以下に収まっています。このusb-dacですが、安物でも素性は良さそうです。
気になるノイズも見てみました。
ノイズの周波数はかなり高いようで、500kHz近辺のようです。可聴周波数と比較して十分高い周波数です。したがって、聴感に与える影響は小さいでしょう。また、振幅も48mVですので、これによる機器の発熱や破損は起きないのではないかと思います。なお、計算上のS/N比は32dBという悲しい結果になりました。しかし、ノイズの基本成分は可聴周波数よりずっと高いので、聴感上ノイズは全く感じられません。
安物USB-DACは使い物になるか?
十分使い物になると思います。さらに、300円でおつりがくる価格ですから、一つ持っておいても良いかもしれません。ただし、直接ヘッドホンやイヤホンを接続することはお勧めできません。しかし、アンプを介して使えば、十分な再生周波数帯域は確保されています。ちなみに、アダプタを介してスマホに接続してみましたが、普通に動作しました。