KZ CastorはDDらしくないイヤホン
KZ Castorというイヤホンが安売りされていたので買ってみました。Castorというイヤホンには、チューニングの異なる二つのモデルがあります。一つは、Harman Target Versionで、もう一つは、Harman Target With Improved Bass Verionです。今回購入したのは、Harman Target Versionです。
KZ Castorはハーマン曲線を再現した音作り
このイヤホンは、ハーマン曲線を意識した音作りになっているようです。これは、商品説明ページに掲載の周波数特性グラフを見ても解ります。
5kHzから上の周波数で、共振が原因と思われるグラフの乱れがあります。しかし、20~40Hz、そして3kHzをピークとした二つの山を持った周波数特性はハーマン曲線に忠実です。
KZ Castor開梱
中国から送られてきた、KZ Castorを子細に見ていきましょう。
他の低価格イヤホンでも良く見られる、紙箱を紙製のスリーブで覆う梱包です。
内容物を取り出してみました。本体の他に、交換用イヤーピース二組、音質調整スイッチ操作用の金具、ケーブルが同梱されています。音質調整スイッチ操作用の金具はCastorならではの付属品です。形状を見ても解るとおり、スマホのシム抜きピンでも代用できるでしょう。
音質調整スイッチ
KZ Castorには音質を調整するスイッチが用意されています。
この音質調整スイッチはCastorの特徴です。このスイッチを操作することで音質を調整できます。4つのスイッチの1と2が低音域、3と4が中高音域の調整用となっています。周波数特性のグラフを見ると、調整幅は3dB程度です。したがって、劇的な変化は期待できません。しかし、高域が刺さる場合や、低域が被ってしまう場合には有効でしょう。したがって、このスイッチは、好みの音を作るというよりも、過剰な音を整理するためのものでしょう。普段は全部ONにしておいて、余分な音が気になるときに使うものと考えておくと良いでしょう。
KZ Castorの音はDDらしくない
Castorの音を聴いてみました。このイヤホンは二つのDD(ダイナミックドライバ)を搭載しています。ダイナミックドライバは、どちらかというと低音域の再生を得意としています。これは、構造上、振動版の面積を多きくしやすいことに起因します。その一方で、高音域は低音域の音圧に圧されて控えめに聞こえることが多いです。
しかし、KZ Castorは10mmと8mmの二つのダイナミックドライバーを搭載しています。これにより、低音域と中高音域を別々のドライバーに受け持させているのでしょう。
そのためか、一般的なDD一発のイヤホンとは全然違う音が出てきます。それは、多くの高級イヤホンに通ずる高音域重視のチューニングを思わせる音です。しかし、DD一発イヤホンから乗り換えると、低域の弱さを感じます。しかし、低域が出ていないわけではありません。高域がしっかり出ているために、相対的に低音が弱く感じるのでしょう。
KZ Castorの音は、DDイヤホンらしくない音です。むしろ、BA(バランスドアーマチュア)ドライバで構成されたイヤホンに近い音です。KZの製品ならば,方チャンネルに8個のBAドライバを詰め込んだAS16に似た音作りです。
メーカーもこれを見越して、低域を強化したCastorを最初から用意しているのでしょう。DDイヤホンに慣れた人は、低音域強化版を選ぶと良いでしょう。
接続機器にも注意
KZ Castorは、周波数によりインピーダンスが大きく変化します。KZ Castorのインピーダンスは、31~35Ω(カタログ値)です。しかし、DCに対するインピーダンスは128~192Ω(実測値:スイッチ位置により変化します)です。つまり、周波数が低くなるほどインピーダンスが高くなります。これは、内蔵の音質調整回路にコンデンサが使われていることに起因します。
つまり、周波数が下がるにつれて、インピーダンスは上昇します。その結果として低音域が弱くなります。
このような、低域が弱いイヤホンを上手に鳴らす一つの方法として、ダンピングファクターを下げる方法があります。接続機器の出力インピーダンスを上げることで、ダンピングファクターを下げることができます。これにより、低音域の解像度は下がりますが、豊かな音になります。
先日レビューした、QKZ ST3とは逆に、自作ヘッドホンアンプでは、音痩せが顕著でした。しかし、PCのイヤホン端子に接続すると、良い感じに鳴ってくれます。つまり、KZ Castorの音が痩せていると感じたら、出力インピーダンスの高い装置を使うと良いでしょう。