ClassAAヘッドホンアンプを組み立てる

ClassAAヘッドホンアンプを組み立てました。PCBの設計をしてから、しばらく時間をおいてしましました。しかし、漸く部品が揃いましたので、組み立てたいと思います。
ClassAAヘッドホンアンプに使用するオペアンプ
今回組み立てるClassAAヘッドホンアンプには、二個のオペアンプを使用します。一つは電圧増幅用で、もう一つは電力増幅用です。本来、電圧増幅用には同相除去比の高いオペアンプを使用します。そして、電力増幅部には出力の大きなオペアンプを使うべきです。
しかし、今回は電圧増幅用も、電力増幅用もNJM4580というオペアンプを使用した。これは、以前行った確認の結果を反映したものです。確認の結果、電力増幅部よりも電圧増幅部のスルーレートが高いとひずみが増大することが分かりました。今回は、ひずみの増大を抑えるために電圧増幅と電力増幅をNJM4580で統一しました。

また、NJM4580はデータシートにも記述されているとおり、ヘッドホンアンプとしての利用を想定しています。それを裏付けるように、出力電流は最大50mA取り出すことができます。極端に能率の低いヘッドホンアンプでなければ十分駆動できるはずです。
ClassAAヘッドホンアンプのPCB
今回組み立てるClassAAヘッドホンアンプのPCBサイズは、30.4×40.6mmです。これまで、数多く制作してきたディスクリートヘッドホンアンプと比較して、さらに小さくなっています。

さらに、オペアンプを使用することで、部品点数は減っています。
ClassAAヘッドホンアンプの肝は、ホイートストンブリッジにあります。今回は、使用するホイートストンブリッジを構成する抵抗を全て1Ωにします。これは、オリジナルのClassAA回路とは異なっています。しかし、シミュレーション上も、机上の計算でも良好な結果が得られています。

ClassAAヘッドホンアンプ組み立て
今回の組み立ては、部品点数が少ないので楽です。まずは、背の低いオペアンプを取り付けます。今回は、ソケットを使用せず、直付けとしました。

オペアンプに続き、抵抗を取り付けます。抵抗の多くは、一列に並べてありますので、設置は容易です。

PCBの組み立てが終わったら、外付け部品の取り付けを行います。

ClassAAヘッドホンアンプの性能測定
組み立てが完了したら、性能測定です。今回は、オリジナルとは異なる回路乗数のホイートストンブリッジを使っています。そのため、シミュレーションで得たような、良好な結果が出るかが焦点となります。
性能測定:正弦波
ファンクションジェネレータで作った正弦波を入力し、増幅後の波形を観察します。



1Hzから,可聴上限である20kHzまでの正弦波では、乱れもノイズも見られません。
さらに周波数を上げ、増幅度がピークとなる周波数を探ってみました。

150kHzで振幅はピークとなりました。波形は大きく乱れています。この乱れは、電圧増幅部と電力増幅部での位相ずれによるものと想像しています。
性能測定:矩形波
矩形波は、正弦波と異なり、多くの高調波を含んでいます。そのため、高調波ひずみを、出力波形のオーバーシュートやリンギングとして観察できます。



1Hzでは、綺麗な矩形波が観察されています。しかし、1kHzで僅かにオーバーシュートが見られます。また、20kHzではかなり大きなリンギングが出ていることが分かります。
性能測定:リニアリティー
電位によって、増幅率が変動しないことを確認するため、三角波と階段波を入力し、増幅後の波形を観察します。三角波では、波形にゆがみが無ければリニアリティーは確保できていると判断できます。階段波では、出力波形の段差が揃っていることを確認します。


三角波についてはきれいな波形が再現されています。しかし、階段波では、リニアリティーは確保できていますが、オーバーシュートが大きく出ています。
これは、電力増幅部に電圧増幅部の性能(信号追従性≒スルーレート)が追い付いていないためと造像します。過去の試験のように、電力増幅部よりも電圧増幅部のスルーレートを落としたほうが良いかもしれません。
性能測定:スルーレート、無信号時オフセット

スルーレートの測定を行いました。その結果、685nSあたり1.59Vの電圧変化でした。これをマイクロ秒あたりに換算すると、2.3V/μSとなります。優れた数値ではありません。しかし、オーディオ用としては十分な数値です。


無信号時オフセットに関しては、左チャンネル-0.2mVに対して、右チャンネル2.6mVでした。右チャンネルのオフセットがやや大きく出ています。しかし、それでも一桁mV程度ですので、接続機器に悪影響を与えることはありません。安心して使えます。
試聴
性能試験の結果は、高い周波数で発生する盛大なリンギングを除いて良好でした。では、実際にはどうなのか、試聴で確認しました。

低域から高域まできれいに出ていました。しかし、ボーカルのサ行の音が刺さります。性能試験の結果を見ているため、心理的バイアスの効果もあるかもしれません。しかし、聴き疲れする音です。正直、このまま使い続けるのは厳しいので、改良を試みたいと思います。まずは、ホイートストンブリッジの定数変更をしてみたいと思います。これで、改良できなければ、電圧増幅部のオペアンプをNJM4580からNJM4558に変更してみようと思います。