以前、Kanen/Kanonイヤホンのベスト５をリストアップしましたが、その後、順位の変動がありましたので、最新版を作ってみました。

Kanenのイヤホンについては、入手の都度レビューをして私のホームページに掲載してきました。実は掲載していないレビューもいくつかありますが、掲載していないものはKM-93のように特定の用途向けの製品や、KM-91のように評価に値しないものです。Kanenのイヤホンについては主にfocalprice.comから購入していますが、これまでのレビューで、ほとんど全てのKanenのイヤホン入手しました。今後、Kanenから新モデルが出るまでの間は、Kanenイヤホンのレビューは一旦休止します。

ということで、中締めの意味を込めて、これまでレビューしたKanenのイヤホンの中からベスト５を挙げてみたいと思います。

第一位　Kanen KM-903

低音域にボリュームを持たせたイヤホンです。低音域は強調されているものの、決してブーミーな鳴り方ではありません。５０Hz以下のサブソニック領域までしっかりと感じさせてくれる低音域はなかなか見事です。Kanenならではのドンシャリ傾向がわずかにみられ、中音域はやや消極的ですが、質感は悪くなく、ボーカル部分もしっかり再生されます。高音域はわずかに強調されていますが、華やかさを添える程度の強調で、決して全体を濁すことはありません。傾けて取り付けられた音道はフィット感が高くなっています。唯一の難点は添付のイヤーピースです。添付のイヤーピースが、私にとってはやわらかすぎで、気密性および遮音性が十分ではありません。百円ショップで販売されているイヤーピースに交換することで問題は解決しました。若干の難点はありますが、高いレベルの再生をしてくれるイヤホンです。

第二位　Kanen KM-928

前回のトップ５で、一位に挙げたイヤホンです。木製のハウジングを使ったイヤホンです。Kanenのイヤホンにしてはフラットに近い周波数特性です。ただし、Kanenのイヤホンに共通の高音域の華やかさは失われていません。低音域はおとなしく、誇張や省略はありません。中音域はわずかに後退していますが、不足感を覚えることはないでしょう。再生周波数帯域の広さは感じられませんが、常用域を過不足無く鳴らしきる実力はなかなかです。

第三位　Kanen KM-948

直径6mmという小口径のドライバを使ったイヤホンです。ドライバから音道の出口までの距離が短いため、ダイレクト感の強い鳴り方です。小口径ドライバであるにもかかわらず、低音域は十分に出ます。中音域は後退しており所謂ドンシャリ傾向の鳴り方で、Kanenらしい鳴り方といえるでしょう。高音域は華やかかつ伸びやかです。難点としては、イヤーピースの形状です。音道が細く、一般で売られている交換用イヤーピースを使用することは出来ません。ただし、添付のバルーン型のイヤーピースは気密性と遮音性に優れており、交換の必要は無いでしょう。また、ドライバ部分がコンパクトですので、携帯性が高く、装着感も上々です。さらに、ドライバ部分が密閉型であるため、良く出来たイヤーピースとあいまって遮音性が高く、電車・バスでの使用にも適しています。特筆すべきは音像定位です。ドライバから耳までの距離が短いためダイレクト感が強く、このダイレクト感が音像定位の良さに貢献していると思われます。

第四位　Kanen KM-902

この奇妙な形をしたイヤホンは、SENNHEISER IE7の形状を真似したもので、コピー商品ともいえます。独特の装着感で、ベストポジションを見つけるまでは、十分は気密性が得られないため本来の性能が発揮できません。ひとたびベストポジションが得られた後は、Kanenのイヤホンらしからぬ素直でフラットな再生をしてくれます。このイヤホンは、所謂シュアー掛けで使用するため、ケーブルへのタッチノイズは抑えられます。そして、ドライバ部分にドライバーの背圧を逃がすためのスリットが設けられているにもかかわらず遮音性は高く、音楽に集中できる環境を提供してくれます。ある意味Kanenらしくないイヤホンですが、その素直な鳴り方は高く評価できます。

第五位 Kanon MD-52

金属ボディーのイヤホンで、良い意味でも悪い意味でもKanen/Kanonらしいイヤホンです。特筆すべきは高音域の伸びの良さです。ボーカルのサ行の音が強調される癖を持っていますが、どこまでも伸びやかな高音域はその逞しい再生能力の証です。中音域は後退しており、所謂ドンシャリです。このKanon MD-52はレビュー後マイナーチェンジが施されました。マイナーチェンジ後は、ドライバ部分への”Kanon”の表記が無くなり、左右のドライバの区別が全くつかなくなってしまいました。さらに、添付のイヤーピースがやわらかいものに変わっており、装着の仕方によっては気密性が十分に得られにくくなってしまいました。このことにより、MD-52の持ち味である、低音域が十分に出なくなってしまいました。もし、低音域に不足が感じられた場合には、装着方法を工夫するか、イヤーピースの交換をお勧めします。

以上が、現時点でのKanenのイヤホンベスト５です。第一位から第四位までをKanen KM-9xxシリーズが占めました。Kanen KM-9xxシリーズは2009年以降に発売されたものです。Kanenはこの二年ほどの間にかなり性能の高いイヤホンを製造するようになりました。冒頭に書きましたとおり、中にはひどい製品もありますが、粗悪な製品の割合は確実に減っています。今後の製品には期待が持てます。