フィッシュストーリー(Fish story)

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伊坂幸太郎氏の小説で『フィッシュストーリー』と題されたものがあります。恥ずかしながら、フィッシュストーリーと聞いて、魚の話だと思っていたのですが、フィッシュストーリーというのは「ホラ話」を指す成句らしいのです。ホラ話というのは80年代の漫才ブームの時には随分と流行ったものです。「シュウマイ好きのおじいちゃん」の話とか、ラーメンが売れなくて悩む「忍者のラーメン屋」の話はその当時の白眉ではないかと思います。
しかし、現実というのは時としてホラ話にも似た雰囲気を漂わせる事があります。最近のニュースでは、放射性セシウムに汚染された魚をすり身にしてから水で洗うと95%が除去されるとか、原子炉の冷却ポンプを動かそうと電源車を持っていったけど、プラグ形状が合わなくって使えなかったとか・・・。
ホラ話は結末が笑えなければいけないのですが、やはり現実は笑えないですね。
さて、この一年というもの、ニュースに事欠かない東電ですが、国に対して総額一兆八千億円の追加支援を合理化案の提出無しに要請したようです。つまり、合理化はこれ以上やるつもりは無いけど、お金は出してねという意思表示です。これが認められなければ、債務超過に陥り、廃炉処理や賠償金の支払に影響が出ますので、国としては支援をしないわけにはいきませんので、すんなりと決まるはずです。
この状況を見ていると、どうも東電と北朝鮮が同種に見えてきます。北朝鮮は「核兵器を持っているぞ」「ミサイルも持っているぞ」と脅す事で支援を要請し、東電は「損害賠償が滞るぞ」「電気が止まるぞ」といって国に金をせびり、利用者に値上げを突きつけるのです。そして、さらに両者に共通している事があります。それは、「もう後が無い」ということです。確かに北朝鮮は核を持っていますが、数年前の核実験は当初の予定を大きく下回った規模の核爆発しか検出されませんでした。一言で言えば失敗です。ミサイルも、数年前日本上空を越えた物は予定の軌道を大きく外れ、飛距離も短いものでした。つまり失敗です。
東電も、当初10年と見込んだ廃炉処理は30年と見込みが変わり、これも更に伸びて、現在では数百年掛かるとも囁かれ始めています。そして、一部の心無い報道によって電力料金値上げの受け入れ拒否が横行し、結局は契約満了までは値上げを行わないと発表しました。同時に電力料金を支払わない場合には、電力供給を止めるという当たり前のことすら経産省から待ったが掛かった状況です。
何故、このような事態に陥るのか、それは両者に共通するある種の狡猾さと窮状が既に見透かされているからに他ならないのでしょう。