キッドナップブルース

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少し前に、福島の原発で除染作業員による誘拐事件がありました。三人兄弟に声をかけ、車に乗せ、温浴施設に行き、コンビニ弁当を食べさせたというもので、金品を目的としたものでは無く、捉えようによっては寂しさや憂さを晴らすために子供を連れ歩いたというだけで、これが齢の近い子供同士で起きたならそれは誘拐として扱われることは無かったでしょう。 たまたま齢が離れていて、一方が大人で、もう一方が子供というだけで誘拐として事件になってしまうわけです。

ところで、随分古い話になりますが、写真家の浅井慎平氏が初めて監督として撮影に携わった『キッドナップブルース』という映画があります。主演はタモリで、その他にも川谷拓三、竹下景子、内藤陳等々かなり豪華な出演者を招いて作られた佳作です。一般的な評価は低かったのですが、ロードムービーとしての側面もあり、非常に心に残る映画です。少女を自転車に乗せて連れ歩き、しかし、何度も少女を母親のもとに送り届けようとするのですが何故か上手くいかず、結果として誘拐となってしまいます。結末は監獄をイメージさせる格子を掴み叫ぶタモリの姿で終わります

緒方拳主演の『長い散歩』も老人による少女誘拐を描いた作品で、何となく小さな子どもとふらりとどこかに行きたいという願望は人間の根底にあるのかも知れません。