雪の中

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002本日は雪景色です。すでに雪は雨に変わり、その雨も朝方には降りやみましたが、今回の雪は、雪の後に雨が降ったため、ぬかるんでいて非常に歩きずらい状態でした。そんな中、東京国立博物館にやってまいりました。本日の目当ては経典です。経典というものは、厳しい規律の中で生み出され、洗練されたものです。罫は隅々まで緊張感を保ち、書き込まれた筆致も罫に劣らぬ緊張感があります。多くの経典は一行17文字で構成され、現代の書物にはない絶妙なバランス感覚で配置され、機械的に並べられた活字には無い闊達さも持ち合わせています。写真の華厳経は平安時代の作品と伝えられており、その作者は不詳ですが、金泥で引かれた罫は料紙の風合いを損ねることなく調和し、罫に沿って記された経文はややもすれば破たんしそうな危うさを寸でのところで押しとどめており、かなりの力量をもった者の手によるものでしょう。実に見事な作品です。見る者もその緊張と弛緩に心地よいリズム感を感じ取ることができます。まさに逸品です。

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