覆面作家の伊藤司氏の姉妹作、『シンデレラティース』と『ホテルジューシー』ですが、恐らく作者の仕掛けたちょっとしたいたずらなのかもしれませんが、結末に微妙な齟齬があります。そして、ホテルジューシーの装丁に関しては、文庫化されたときに『シンデレラティース』とテイストを合わせたためでしょう、ホテルとポークを重ね合わせたちょっとした洒落の部分が少し隠れてしまっています。

内容の方もちょっとした謎解きの要素が有りますので、表紙にも謎解きの要素を設けたのかもしれませんね。

正直なところ起承転結がはっきりとした連作短編はあまり好みでは無く、また、主人公もその境遇も感情移入しにくく、そういった意味ではさらりと流してしまった感じです。

作者は覆面作家で、生年月日しか公にしていませんが、題材や文体から何となくバックグラウンドがうかがえます。もしかすると、作家自身のバックグラウンドを推理させることこそが読者に投げかけた巧妙な仕掛けなのかも知れません。