藤田宜永氏著『老猿』

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rouen久々に藤田宜永氏の作品を読みました。私の知る藤田氏の作品らしい作品で、主人公と隣人そして居候の心模様が緻密に描かれています。舞台となった冬枯れの軽井沢も実に情緒的で、よく知られている避暑地としての軽井沢とは趣を異にしていて、物語にスパイスを添えています。静かな山荘に訪れる犯罪の足音を差し引いても憧れてしまう生活です。

この作品ですが、第三章までは非常に好きな話運びですが、第四章に入ってからは話が大きくなりすぎているように感じます。一方、結末は最後の数行を除いては実にいい感じですね。

さて、藤田氏の作品は、『老猿』以外には雑誌連載中に読んだ『艶紅』と、映画化された『転々』だけしか知りません。『転々』に関しては映画しか観ていません。この映画ですが、三木聡氏の監督作品ですから、かなりの演出やサブストーリーが盛り込まれているはずで、これが藤田氏の原作である事は想像できませんでした。

藤田氏は、かなり多作な作家ですので、その作品は多いのですが何故かこれまであまり読んでいませんでした。『艶紅』に関しては、当時購読していた雑誌に連載されていたから読んだまでですし、『転々』に関しては三木氏の監督であったから観た映画です。ふと手に取った『老猿』がなかなか良い作品でしたので、先ずは『転々』あたりから読んでみたいです。