菊池寛の『恩讐の彼方に』

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aonotoumonn随分昔になりますが、大分県の耶馬渓にある”青の洞門”を訪れたことがあります。岩肌に穿たれたごつごつとしたトンネルで、国道の一部に指定されています。そんな”青の洞門”をモチーフとした小説『恩讐の彼方に』を手に取りました。既にパブリックドメインになっていますので、無料で誰でも読むことができます。しかも、短編ですので極めて読みやすいです。大正時代に発表された作品ですが、一部に難読漢字が使われている他は、新仮名遣いになっていることも読みやすさに貢献しています。

さて、この作品は、”青の洞門”にまつわる事柄を題材に創作されたもので、史実とは異なるようですが、実際に”青の洞門”を訪れると、『恩讐の彼方に』のようなサイドストーリーが良く似合う場所であること感じますし、また、この小説のようなストーリーが有ってほしいと願ってしまうような場所です。

話は、過去に人を殺めた者が仏門に帰依し、その大願として人々を苦しめた断崖に道を穿つ。親を殺められた者は仇を打つためにその場をお訪れるのだが、最後には共に鎚を振るい道を穿つ。そして、大願成就し道が通じた時にお互い涙を流すところで終わります。

まあ、ありがちな内容ではあるのですが、魂が震える佳作とは本作のようなものを指すのだとおもいます。