月: 2015年7月

『私の名はナルヴァルック』 読書

『私の名はナルヴァルック』

ドキュメンタリー作家の廣川まさき氏の長編ドキュメンタリーの2作目です。一作目の『ウーマンアローン』では、ユーコン川を1500Km下ってフランク安田氏の切り開いたエスキモーの村を訪れますが、本作では捕鯨の村を訪れます。 その村は、嘗てチャリオット作戦という核の平和利用に名を借りた水爆実験の地に近い場所…
『みぞれ』 読書

『みぞれ』

重松清氏の著作の殆どは、家族の絆に焦点を当てたものがおおく、身につまされたりホンワリと暖かくなったり、そんな気持ちにさせられる作品が多いように感じられます。 今回手に取ったのは、『みぞれ』という題名の短編集です。自傷行為に走ってしまう少女、リストラされることの決まったサラリーマン、若いころ演歌歌手だ…
メールとTwitter 日々是好日

メールとTwitter

この1ヶ月程Twitterを使ってみてTwitterの巧みさがようやく解った。限られた文字数だから、簡潔になる。だから、変な形式ばった挨拶もなし。これがイイ。ツイキャスになると時間的に追われるから、とにかく短く短く絡むことになる。これ既に一つの文化になっている。発信者と受け手の非対称なコミュニケーシ…
『小さいおうち』 読書

『小さいおうち』

つい先日、芥川賞と直木三十五賞の発表が有りました。直木三十五賞を受賞しました『流』を早速購入し、これから読むところです。 直木三十五賞を受賞した作品というのは、基本的に外れが無いと思っています。芥川賞は難解な小説が受賞する傾向が有るような気がして、時々外れにあたる事があります。 今回手に取った『小さ…
『ウーマンアローン』 読書

『ウーマンアローン』

作者の方のお名前は「廣川まさき」さんで、男っぽい名前なのですが実は女性です。 この本は、アラスカの大地に一つの村を作り上げた安田恭輔氏の功績に触れ、安田氏の作り上げた村に行くために作者自身がユーコン川を下って行く過程を描いたドキュメンタリーです。ユーコン川を下るその距離1500Kmをたった一人カヌー…
『火花』が芥川賞受賞 読書

『火花』が芥川賞受賞

『火花』が芥川賞受賞しましたね。正直驚きです。芥川賞というと、何となく難しくて難解で読んでるうちに自分のバカさ加減を自覚させられるような作品にしか与えられないのかと思っていましたので、とっても意外です。『火花』については、発売日に買って読んだのですが、すごくわかりやすい。感情移入もできるし、読後感も…
『花酔ひ』 読書

『花酔ひ』

ひょんな出会いから不倫の関係に陥ってしまう二組の夫婦を描いた小説ですが、この小説、結末が実に暗喩に満ちていていいです。 不倫の関係に陥ってしまう二組の夫婦を中心に話は進むのですが、ここにちょっとしたアクセントを加え、登場人物の一人である「麻子」の迷いに気づき言葉をかける「トキ江」の存在が実に光ってい…
『共喰い』 読書

『共喰い』

『共喰い』が芥川賞を受賞した時の著者田中慎弥氏の記者会見は今でも印象に残っています。「もらってやる」という少しすねたような言い方が何となく『共喰い』の主人公である少年の描写からにじみ出ているように感じます。 さて、この『共喰い』という本ですが、他に『第三世紀層の魚』と瀬戸内寂聴氏と田中氏の対談も収め…
坂口安吾の『白痴』 読書

坂口安吾の『白痴』

古い本というのは面白いもので、今だったら絶対に出版できないだろうと思われるものもあります。逆に竹内浩三氏の作品のように、発表当時はスミ塗りだらけで、現代だからこそ全てを読める作品というのもあります。しかし出版大国の日本で数十年の時を経て消え去っていない作品というのは存在価値が広く認められていると受け…