『寂庵だより』

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寂庵だより何となくとげとげした世の中に、何となく嫌気がさしてきて、何となく疲れた時にこんな本がいいですね。癒しとは少し違って、過ちは過ちとして、苦しみは苦しみとしてありのままを受け入れる事だと教えてくれているような気がします。

著者は瀬戸内寂聴氏で、恐らく知らぬ人はいないでしょう。突然出家(本書中では出離と書かれています。言葉の意味としては出離がふさわしいです。)した作家で、剃髪得度された後も精力的に作家活動をされています。本書の中にも書かれているとおり、作者は嘗てさまざまな過ちを犯し、その事柄についても触れられていますが、それさえ清々しく感じられるほどすべてを受け入れるという事こそが人の生きる道であると教えてくれます。かと言って説教じみた部分は全くなく、時に怒り、時に笑い、海外旅行もし、酒を飲み、肉を食らう。そんなありのままの生身の人間の部分も描かれています。

この本を読んで、少し高みから人の営みを俯瞰して観る観察眼を持った人なのだと感じさせられます。少しだけ視点を高く持ち、少しだけ俯瞰する。それこそが全てを受け入れるという事なのではないかと思わされました。そんな視点を持つための一つの修業が本書でも書かれている写経という行いなのでしょう。中学生の時に高田好胤先生から写経を進められ、その時は面倒くさくて写経なんてやる気もせず、これまで一度も写経をしたことはありませんが、この本を読んで写経をしてみたくなりました。