『がんばらなくていいんだよ』

Spread the love

がんばらなくていいんだよ7年間を掛け、山中を4万キロに渡って巡拝する荒行である千日回峰行を2度満行した行者である酒井雄哉氏の『がんばらなくていいんだよ』という、いかにも癒されそうな本を読んでみました。恐らく、編集者が酒井氏にインタビューをし、酒井氏が語った言葉を書き起こしたものと思われます。全体的に平易な口語調で記されており、語り掛けてくれているように感じられます。

千日回峰行という厳しい修行を行った者にしか至る事の出来ない高みから語り掛けられているように、あらゆる欲、妬み、怒り等の負の感情から自由で有れと説いています。そのためには、時に逃げ、時に忘れ去り、時に無関心であることも必要であるであると語っています。とある先生の言葉を借りるならば、酒井氏は厳しい修行によって高い抽象度を持つことが出来たという事なのでしょう。

筆者は仏門の人でありますが、その考え方は仏教の教えに囚われることなく、人として身に着けなければならない事柄ばかりです。本書の中で度々”恕”という言葉がつかわれます。論語を学んだ方であればご存じでしょう。かの孔子も”恕”という言葉をしばしば使っています。簡単に言えば”恕”とは相手を慮る事です。酒井氏は思いやりという言葉で”恕”の意味を説いています。

本書の冒頭、酒井氏は情報が氾濫し、そして情報を得ることばかりに躍起となり、実践をしない世の中になっていると嘆いています。

さて、とかく住みにくい世の中になってしまったものだと思う今日この頃ですが、酒井氏が本書で語った”恕”を以って指針とし、また結末に語っている”一日一生”の思いで、毎日生まれ変わるような気持ちで生きて行けば、この世は少しだけ住みやすくなるのかも知れません。

酒井氏のような徳の高い僧侶というのは宗教という枠組みを超えて、広く語り掛けることで世の中を良くしてくれる存在なのでしょう。