『破獄』

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吉村昭氏の『破獄』です。モデルとなった人物は作品中では仮名となっていますが、ネットで検索すれば簡単に調べることができるでしょう。

戦前から戦後にかけて4回の脱獄を図った囚人の半生を追った作品です。監獄の過酷な環境や囚人に対する厳しい処罰に抵抗する主人公は、常人離れした身体能力と知能を駆使し、時には心理的に看守を追い詰め、その隙を突いて脱獄を図ります。脱獄をした後は山野を駆け、洞窟に身を隠し、足がつくのを恐れ、民家から少しずつ食料や衣類を盗みながら逃亡生活を続けます。逃亡を恐れた刑務所では重い手錠に加え足枷をも嵌めての受刑生活を余儀なくされます。一方、最後に収監された府中刑務所では、主人公が情にもろいことに目を付け、危険を覚悟で手錠・足枷を外し、他の受刑者と変らない待遇をし、脱走をやめさせることに成功します。そして、最後には仮釈放まで許されることになります。

吉村昭氏の作品は綿密に取材がされており、読者を試すような部分があります。この作品でもいくつかそんな部分があるのですが、その一つが東京の呼称でしょう。吉村氏が作品にちりばめた仕掛けを見つけるのも面白いですね。