『今日、ホームレスになった』15人のサラリーマン転落人生

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この本のサブタイトルは「15人のサラリーマン転落人生」となっていますが、取り上げられている中にはサラリーマンではない方にも取材されています。この本が書かれたのは平成中期で、丁度ITバブル崩壊や米国の同時多発テロの影響が尾を引いていた時期です。オフィス街で寿司屋を営んでいたすし職人、旅行代理店から独立して旅行会社を立ち上げた元サラリーマン、様々な支店をたらいまわしにされた後に片道切符で出航させられたのちにホームレスになった元銀行員等、その経歴やホームレスになった経緯は様々です。

この本の副題は「15人のサラリーマン転落人生」ですが、取材対象はサラリーマンばかりではありません。中には早期退職に応じた結果ホームレスになった方もいますし、早期退職に応じなくても勤務先が倒産してホームレスになった方もいます。この本に書かれたエピソードからホームレスに転落するパターンを読み取ってみました。安定していると思われる銀行員でさえホームレスになっていますし、手に職を持ったすし職人や印刷屋を営んでいた方もとりあげられていました。しいて言えばこの本には公務員は登場しませんでした。やはり公務員は不況に強いということでしょうか。

また、住宅ローンを抱えていて、退職金が住宅ローンに消えてしまった方もいましたので、住宅ローンは不況の時には足枷となるように思えます。その他、商工ローンも鬼門のように読み取れました。また、当たり前ですが一度は接待などで贅沢を味わってしまった方も転落しやすいように読み取れました。

また、この本では地域性にも触れられていて、ホームレスが多い都道府県一位は大阪府で二位は東京都です。この二つを合わせて日本全体のホームレスの概ね半数を占めるそうです。これは、大阪と東京にはホームレスを受け入れるだけの日雇い仕事や簡易宿所が多くあるためかも知れませんし、ホームレス予備軍が殊に多く住んでいるためかも知れません。個人的には後者の割合が多いように感じます。

この本の巻末でも触れられていますが、だれもがホームレスになる可能性を含んでいますし、景気が悪くなればだれもがあっという間にホームレスに転落する可能性があるいのでしょう。そういった意味では、今の日本にはホームレスとホームレス予備軍の二種類の人しかいないのかも知れません。