石原慎太郎氏の訃報に触れて。

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今日(2022年2月1日)、作家の石原慎太郎氏がお亡くなりになりました。石原慎太郎氏は作家としてよりも政治家、そして都知事としての印象が強いかもしれません。私も石原慎太郎氏の作品はたった三冊しか読んでいませんでした。

一冊目は最初の作品で、芥川賞受賞作でもある『太陽の季節』そして弟で俳優の石原裕次郎氏を描いた『弟』、三冊目は政治家時代にその金権政治を批判した政敵でもあった田中角栄氏の生い立ちから失脚、そして没する瞬間までを田中角栄氏自身の視点で一人称で描いた『天才』です。

筆者の手によるあとがきでテニスからの帰りに田中角栄氏と出くわしたエピソードが印象的でした。嘗ての政敵でもありながら『天才』では、角栄氏失脚の要因であったロッキード事件が米国の意向を斟酌せずに中国との国交正常化を行い、米国の石油ビッグスリーを出し抜き直接原油の輸入に踏み切ったことへの報復であったとのニュアンスで書かれています。

一度は敵対していながらも、たまたま通りかかった石原慎太郎氏を半ば無理やりに引き止め、ビールを酌み交わしたエビソードからは田中角栄氏の度量の大きさが垣間見えます。そしてあえて『天才』を田中角栄氏自身の一人称で書いたことは、石原慎太郎氏がどこかで田中角栄氏に対して憧憬の思いがあったのではないでしょうか。

田中角栄氏もそれに対峙し、後に『天才』という題を冠した著作でその人生にもう一度光をあて、後世に残した石原慎太郎氏も現代の豪傑と呼べる存在だったと思います。

ご冥福をお祈りします。

石原慎太郎著『天才』

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