松本清張短編集『張込み』

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松本清張著『張込み』(傑作短編集5)は面白いです。本の表題になっている『張込み』の他、『顔』『声』『地方紙を買う女』『鬼畜』『一年半待て』『投影』『カルネアデスの舟板』が収められています。この本に収められた短編の映像化率はかなり高いと思います。その中でも『鬼畜』は特に印象的です。

何度も映像化されていますが、野村芳太郎監督の手による映画『鬼畜』がその中でも白眉でしょう。原作と映画では結末が少し異なっていますが、どちらも必見の作品だと思います。かなり悲惨なお話なのですが、この『鬼畜』は実際にあった事件をベースにしているというところが恐ろしいです。

松本清張氏の作品はどれも心理描写が見事です。この短編集に収められた作品はいずれも今風に言えばミステリーに分類されると思いますが、心理描写が見事ですので、これらの作品が上梓された昭和20~30年代は現代と生活様式も風俗も随分と異なっていますが、そんな時代背景の違いを超えて作品の面白さは生きています。

数々の作品を残した松本清張氏の作品の中から、特に選りすぐりの名作短編を集めた『張込み』お勧めです。