ステップ応答を見る、市販ポタアンの場合

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自作ヘッドホンアンプのステップ応答をみてみました。今度は、市販ヘッドホンアンプのステップ応答も見てみようと思います。

過去の経験から、アンプの特性は電力増幅部のオペアンプで決まります。これは、過去に行ったClassAAのヘッドホンアンプでの検証でも明らかです。今回も、オペアンプの差をより顕著にするために、矩形波によるステップ応答を見ます。

市販品のステップ応答その1

このポタアン、筐体の一部が透明の樹脂になっていて、内部回路を見ることができます。使われている素子と数量から、ディスクリート構成のようです。電力増幅部はプッシュプル増幅を複数並列動作させているように思えます。しかし、電圧増幅部分の構造はわかりませんでした。

早速、前回と同じように20kHzの矩形波入力時の波形を見てみることにしました。

市販ポタアンのステップ応答はこんな感じのセットアップで行いました。
こんな感じのセットアップで波形観測をしました

今回買ったオシロスコープが、安物の割に便利にできています。簡易なファンクションジェネレーターを内蔵しています。ですからオシロスコープ一台で入力信号を作って出力信号を観測することができます。で、出てきた波形がコレ↓です。

市販ポタアンその1は、安価にもかかわらず、見事なステップ応答です。
市販ポタアンから出てきた波形(黄色の線が入力波形で、水色の線が出力波形)

見事ですね。1000円で買った安物ポタアンとしては100点満点あげても良いでしょう。ちなみに1MHzの矩形波ではこんな感じです。

1MHzを加えても、波形に鈍りは見られますが、増幅出来ています。
市販ポタアン、1MHzでも結構いい感じです

1MHzだと、ファンクションジェネレーターから出てくる信号も鈍っています。このときのスルーレートを計算してみましたが、22.9V/μsと、かなり優秀です。安物ポタアンが意外といい感じであることが解りました。

市販品のステップ応答その2

さて、実はこの他にもう一台ポタアンを持っています。そいつの波形も見てみることにしましょう。セットアップはこんな↓感じです。

ステップ応答計測はこんなセットアップで行いました。
もう一台のポタアンも同じセットアップで測定してみました

もう一台の方は、内部の回路は見えません。このポタアンは、簡単に分解できそうな構造ではありません。また、付属の説明書からも内部の構造をうかがうことはできません。まるっきりブラックボックスです。例によって20kHzの矩形波を入れてみた結果がコレ↓です。

市販ポタアンその2は、出力の立ち上がりが丸みを帯びた波形になっています。恐らく、入力側のカップリングキャパシタが小さいか、入力素子のインピーダンスが低すぎるかでしょう。
もう一台のポタアンから出てきた波形

随分となで肩の波形です。この波形から察すると、カップリングコンデンサの容量が十分でないようです。しかし、このなで肩は矩形波を入力しているから顕著になっているものです。実際の音楽ソースに20kHzの矩形波が含まれていることは極めて稀です。

ステップ応答がすべてではない

もっと過酷な条件で試してみます。80kHzの矩形波を入力してみました。

あえて、波形の乱れを強調する目的で80kHzの矩形波を入力しました。
80kHzの矩形波を入力したときの波形

ひどいですね、入力波形は跡形もなく崩れ去っています。

正弦波を入力した場合

周波数はそのままで、波形を矩形波から正弦波に変えるとどうなるでしょうか。

矩形波で見られた波形の乱れは、正弦波では見られません。ただし、位相の遅れは見られます。
正弦波の増幅

正弦波の場合、増幅後の波形がやや右にずれている(遅れている)ことが解ります。しかし、波形そのものは入力波形と相似を成しています。矩形波という意地悪な波形を入力して、欠点を強調したために悪い結果に見えました。しかし、正弦波を加えた時の波形はそれほど悪くありません。つまり、このポタアンがとんでもない粗悪品と決めつけるのは拙速です。

周波数を100kHzまで上げてみます。

正弦波であれば100kHzでも増幅出来ています。
100kHz正弦波を入力したときの波形

80kHzを入力したときと同じく、増幅後の出力波形が遅れていることが解ります。そして、縦方向の大きさが小さくなっている(増幅度が下がっている)ことも解ります。その一方で、波形自体は乱れておらず、正しく増幅されていることが解ります。

矩形波増幅という過酷な条件では確かに差が見られました。しかし、正弦波であればたとえ100kHzでも、それなりに増幅出来ています。ということで、今回測定した二つのポタアンは十分に使い物になる性能を有しています。ゴミ箱行きにはしませんし、これからも使い続けます。