希少な(?)パッケージのオペアンプを使う

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昔持っていた学研のマイキット200という製品がありました。アタッシュケース型の筐体を開けると、電子部品がずらりと並んでいて、それぞれの電子部品の端子どおしをリード線を挟んで繋ぐことで回路を作っていくというものでした。ほぼ同時期に電子ブロックという製品も売られていて、こちらの方が人気があったのではないでしょうか。

そんな電子ブロックの影に隠れたマイキット200にはICが一つだけ搭載されていました。おぼろげな記憶では、NJM2114Lという平たくて、信号ピンが一列に並んだオペアンプだったと思います。何しろ40年以上も前のことですから、かなりうろ覚えです。マイキットの説明書では”IC”としか説明されておらず、オペアンプという言葉は使われていなかったと思います。また、動作についての詳しい説明は無かったと思います。小学生向けの製品ですから、詳細な説明は省いていたのだと思います。

オペアンプといえば、信号ピンが二列に並んだDIPパッケージというのが先ず頭に浮かびます。実際、私の手元にあるオペアンプは、全て4本の信号ピンが2列に並んだ8ピンの、所謂DIPパッケージです。昔、マイキット200に搭載されていた8本のピンが一列に並んだSIPパッケージは、全くと言ってよいほど見かけません。そんなSIPパッケージですが、これを上手に使うとコンパクトなヘッドホンアンプが作れるのではないかと思います。

ということでSIPパッケージの2回路入りオペアンプをざっくりと探してみました。いつものAliexpressで探してみたのですが、どうやら日清紡マイクロデバイスの製品しかなさそうです。とりあえず使い易そうなNJM4580L(NJM4580のSIPパッケージ品)を発注しました。

品物が届いたら作る回路を、簡単にLTSpiceで作ってみました。出来上がった回路はこんな感じです。

NJM4580+プッシュプル電力増幅を使ったヘッドホンアンプ回路

シンプルで失敗のない、安全第一の回路構成にしました。電力増幅段はトランジスタ2N2222と2N2907のペアとしました。バイアスは1N4148を1kΩで電源側に引っ張ってボルテージシフトして、AB級動作にしました。シミュレーション上、貫通電流は1.4mA程しか流れませんので、貫通電流対策の抵抗器は省略しました。

NFB(負帰還)は電力増幅段の出力から取り出して、出力信号のオフセットをキャンセルするようにしました。電圧増幅段のNJM4580の増幅度は約5倍としました。信号経路には直流成分を阻止するカップリングコンデンサは入れていませんので、入力側に接続する機器が直流成分を出さないことを事前に確認する必要があります。

次にこの回路の歪みをシミュレーションしてみます。

FFTシミュレーションの結果

偶数次の高調波はほとんど出ていないようです。奇数次はそこそこ出ているように見えますが、-40dB程度ですので、よほど耳が良くなければ感じられないでしょう。

周波数特性のシミュレーション結果

周波数特性のシミュレーション結果は、信号経路にキャパシタを使っていませんので、想像していた通りフラットです。

0.3VP-P,1kHz入力時の出力波形

0.3VP-P、1kHzの正弦波を入力したときの出力波形です。P-Pの電圧は1.6V、電流は200mA程です。実際にはR8の4.7kΩの代わりに可変抵抗器を入れますので、もう少し出力は大きくすることができます。ヘッドホンアンプとしては十分な出力だと思います。

次に、部品の配置を考えるために、データシートからピン配列を抜き出してみました。

NJM4580Lのピン配列

使い易そうなピン配列です。4番の-側電源端子を中心に左右対称になっています。電力増幅段も左右対称の構成になるので、相性が良さそうです。ざっくりではありますが、実態配線図も作ってみました。

実態配線図(仮)

電圧増幅段と電力増幅段を密着させて配置できるので、かなりコンパクトになりそうです。配置と配線は改善の余地があると思うので、部品が来るまでのあいだ、構想を練ってみたいと思います。