オペアンプ(単電源)を無理やり使う

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先日判明した手持ちのオペアンプTL082が偽物だった件の続きです。色々調べて判った単電源オペアンプを両電源で使う方法を実践してみます。先日作ったヘッドホンアンプを単電源オペアンプ用に改造してみます。そして、実際に出力波形を見てみようと思います。そして、なぜオーディオ信号の増幅に単電源オペアンプがあまり使われないのか? その理由も探ってみたいと思います。

ヘッドホンアンプの改造

改造は簡単です。オペアンプの出力端子とマイナス電源の間に抵抗器を挿入するだけです。今回は4.7kΩの抵抗を挿入しました。オペアンプのアイドル電流は1.27mA程度になるはずです。

今回改造したヘッドホンアンプです
改造箇所 ー 赤矢印で示した二つの抵抗器を追加しました

今回使ったオペアンプ

今回動作チェックに使用する単電源オペアンプ ー TL082の偽物とNJM12904Dです

出力波形の観測

いつものように20kHzの矩形波を入力から入れます。そして、電圧増幅と電力増幅後の波形を観測しました。先ずはTL082(偽物)使用時の波形から見てみます。

TL082(偽物)使用時の出力波形

図中の水色の線が入力信号で、黄色が出力信号です。出力信号を見ると、対策前は盛大に出ていたクロスオーバー歪みは姿を消しています。しかし、出力信号の波形が細かく乱れています。レベルとしてはそれほどでもありませんが、ノイズが乗ってしまっているようです。

つぎに、NJM12904D使用時の波形を見てみます。

NJM12904D使用時の出力波形

NJM12904D使用時の波形です。この波形にも、TL082(偽物)程ではありませんがノイズが乗ってしまっています。ちなみに、NJM12904のスルーレートは計算では0.727V/μsでした。この値はデータシートに記載されたスルーレートの値0.7V/μsと概ね一致します。

両電源オペアンプの波形

比較のためにNJM4558の波形を見てみましょう。

NJM4558使用時の出力波形

TL082(偽物)やNJM12904使用時に見られたノイズは見られません。単電源オペアンプで見られたノイズは、恐らく電源から回り込んだものと思われます。では、なぜ両電源オペアンプではノイズが乗っていなかったのでしょうか? 以下に考察してみます。

ノイズ原因の考察

今回使用したヘッドホンアンプの電源部には、昇圧回路が乗っています。この、昇圧回路が発するノイズがグランドラインに乗ってしまったのでしょう。単電源オペアンプの場合、グランド電位から増幅します。そのため、グランド端子を通じて入り込んだノイズも増幅してしまいます。

一方、両電源オペアンプにはグランド端子がありません。入力信号は+電源と-電源の丁度真ん中の電位を基準とします。このため、入力信号は電源の電位から離れた電位になります。そして、電源の電位付近の信号は増幅しません。つまり、±電源電圧の中点付近の電位の信号だけを増幅します。このため、電源からのノイズが入力信号に混じらなかったと思われます。

オーディオ用に適したオペアンプは?

実際に単電源オペアンプと両電源オペアンプの出力を比較してみました。そして、その差を見ることができました。その結果、耐ノイズ性の観点からも、オーディオ信号の増幅には両電源オペアンプ適していることが解りました。