全部偽物でした(泣)

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Aliexpressでオペアンプを買ったのですが、全部偽物でした。しかも、今回購入したオペアンプは、JRC(日清紡マイクロデバイス)の製品です。JRCのオペアンプは偽物が少ないという印象を持っていました。しかし、最近はJRCのオペアンプでも、偽物が出回っているようです。こまったもんです。

オペアンプの真贋判定方法は?

オペアンプの真贋判定は、非常に難しいです。アセトンという溶剤でチップ表面を溶かしてみる方法もあるらしいです。また、チップ裏面のモールド部分の記載で判別しておられる方もいらっしゃいます。

さすがに、偽物販売業者も、オペアンプとして全く動作しないチップを売ることは無いようです。したがって、偽物でも普通に使えてしまうことが大半です。安価で入手性のよいオペアンプ表面の型番を書き換えて、高く販売するわけです。そこで、私はスルーレートを測定することで真贋を判定しています。オペアンプの性能までは偽装できませんから。

スルーレートとは、増幅信号の立ち上がりの速さの指標です。しかし、安価なオペアンプは、スルーレートが低い場合がほとんどです。つまり、メーカーの作成したデータシートと測定値を比較すれば、ほぼ確実に偽物は分かります。

また、クロスオーバー歪みの有無を見ることで、内部構造を推定することもできます。

オペアンプの真贋判定にはオシロスコープが必要です

実際にスルーレートを計測するにはオシロスコープが必要です。やはり、動的な特性を見ることになりますので、信号を視覚化するオシロスコープは必須です。以前持っていたオシロスコープは、帯域が狭かったので、スルーレートを計測することはできませんでした。しかし、現在使っているオシロスコープなら、簡単に計測することができます。

全部偽物だったオペアンプの内訳は?

今回買ったオペアンプは、NJM072とNJM4558です。しかし、何を血迷ったか、NJM072を20個、NJM4558を140個も買ってしまいました。これが全部偽物だったとは・・・。脱力です。

NJM072(偽物)のステップ応答

先ずはNJM072のステップ応答を見てみましょう。

20個買って、全部偽物だったNJM072のステップ応答です。
NJM072(偽物)のステップ応答

スルーレートを算出するために、出力波形にカーソルを入れています。画像左上にカーソルの間隔が数値で表示されています。横方向は1μsです。そして、1μsあたりの電圧変化は390mVでした。つまり、スルーレートは0.39V/μsであることがわかりました。

本物のNJM072のスルーレートは13V/μsまたは20V/μs(NJM072B)です。今回の偽物NJM072の測定値とは大きくかけ離れています。また、0V付近にクロスオーバー歪みが盛大に出ていることもわかります。

NJM4558のステップ応答

NJM4558は、購入した140個全部偽物でした。
NJM4558のステップ応答

次に、NJM4558の方にも、パルス信号を入力し、ステップ応答を見てみました。まずは、いつもの通り、カーソルを入れました。横方向のカーソル間隔は1μsにしました。その時の、電圧の変化量は450mVであることが、画面左上に表示されています。つまり、スルーレートは0.45V/μsでした。

しかし、NJM4558正規品のスルーレートは1V/μsですから、半分以下の数値です。つまり、購入した140個、全部偽物だったわけです。

紛争開始

このまま、泣き寝入りは悔しいので、Aliexpressを通じて、販売者に対する紛争を起こしました。もちろん、スルーレートの測定結果を証拠として送りました。今回は3つの業者から購入しましたので、3件の紛争を開始しました。

早くも返金が決定しました

さっそく、紛争を開始してから数分で、3件のうち1件が、全額返金となった旨のメールが来ました。

これだけすぐに返金に応じるのは、恐らくこの業者は確信犯です。きっと、エビデンスを付けて紛争を起こす人は少ないのでしょう。しかし、今回のように、証拠を突き付けてきた者には、即座に返金で対応するのでしょう。

全部偽物のオペアンプだったので、販売者に対し紛争を起こし、返金を迫りました。その結果、早くも1件が全額返金となりました。
返金決定を知らせるメール

しかし、3つの業者から2種類160個のオペアンプを買って、全て偽物ってすごいですね。1件は返金に応じましたが、残る2件はどうなるか、若干心配です。