オペアンプ真贋鑑定 – ne5532の場合
![](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231171008.jpg?fit=1024%2C768&ssl=1)
今年最後のオペアンプ真贋鑑定をやってみました。これまでの偽物判定では取り扱ってこなかった、ne5532の真贋を判定してみようと思います。ne5532は、オーディオ用としては定番のオペアンプです。そして、このne5532は他のオーディオ用オペアンプとは少し構造が違います。そして、真贋の判断にもこの構造の違いが使えます。
オペアンプ真贋鑑定に使えるne5532独自の内部回路
ne5532は、非反転入力端子と反転入力端子の間に特徴があります。それは、入力端子の間に二本のダイオードが入っていることです。このダイオードの働きにより、+-の入力端子間の電圧が制限されています。最大電圧はダイオードのVf(順方向電圧)になります。これについて、データシートの等価回路図で確認してみましょう。
![ne5532は、反転入力端子と非反転入力端子の間にダイオードが挿入されています。これによって、端子間の電圧を制限しています。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/スクリーンショット-2022-12-31-201718.png?resize=644%2C381&ssl=1)
上の図は、TI社のHPに掲載のデータシートから引用しました。図中の赤丸の部分がne5532の独特な部分です。この図では、ダイオードではなくトランジスタが挿入されています。しかし、このトランジスタはベースとコレクタが短絡されています。これにより、エミッターがダイオードのカソードに。そして、コレクターがダイオードのアノードと等価となります。つまり、トランジスタをダイオードの代用として使っているわけです。
ne5532の改良品、njm2114にもダイオードが入っている
njm2114は、ne5532のセカンドソース品njm5532を改良したオペアンプです。したがって、本家本元のne5532と同じく、反転入力と非反転入力の間にダイオードが入っています。念のため、データシート掲載の等価回路を確認しておきましょう。
![ne5532の改良品である、njm2114の入力端子にもダイオードが入っています。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/スクリーンショット-2022-12-31-204641.png?resize=644%2C345&ssl=1)
オペアンプne5532の真贋はダイオードの存在でわかる
ne5532ファミリーであるか否かは、入力端子間にダイオードがあることを確認すればわかります。では、実際にどのようにすれば良いでしょうか? それは簡単です。反転入力端子と非反転入力端子の間の順方向電圧(Vf)を測ればよいのです。では、実際にやってみましょう。
今回の真贋鑑定対象のオペアンプ
①恐らく本物のne5532
![DACのライン出力部分に使われていたオペアンプ。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231171108.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
一つ目は、そこそこ名の通ったメーカー製のDACに使われていたものです。そもそもオペアンプは交換前提だったのか、ソケットに装着されていました。
②恐らく偽物のne5532
![二番目はヘッドホンアンプ組み立てキット(中国製)に入っていたne5532です。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231171151.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
二番目はアリエクで買ったヘッドホンアンプキットに付属のne5532です。TIのロゴはグズグズです。そして、型番を表す文字も上下に波打っているように見えます。
③出所不明のne5532
![一目でわかるヤバいやつです。ロゴは原型をとどめていません。誰が見ても一目でわかる偽物です。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231171210.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
ヤバいやつ登場です。TIのロゴは原形をとどめていません。また、型番が波打って配置されているのは、これが粗悪な偽物であることを表しています。もし、本物を見たことが無い人でも、一発で偽物と判断できることでしょう。ちなみに、出所は不明です。
ne5532の改良品、njm2114も鑑定します
④njm2114の恐らく偽物
![ne5532を源流とするnjm2114にも登場いただきました。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231171226.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
njm5532を源流とするnjm2114にも登場いただきました。ただし、このnjm2114ですが、チップ表面の型番表示がレーザー刻印です。旧JRC製のオペアンプは、型番は印刷のものがほとんどです。したがって、レーザー刻印の、このオペアンプは偽物だと思います。ただし、旧JRC製のオペアンプと同様に1番ピン側にノッチがありません。したがって、旧JRC製の他のオペアンプの型番書き換え品だと思います。
入力端子間の順方向電圧測定
ne5532は反転入力と非反転入力の順方向電圧を測ればわかります。順方向電圧が0.7V程度であれば、入力端子間にダイオードが入っている証拠になります。また、極性を変えて測定しても同等の数値になるはずです。
①恐らく本物のne5532
![オペアンプの真贋鑑定ですが、ne5532の場合には、独特な内部構造を使用できます。本物と思われるne5532の端子時間電圧は858mVでした。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231172525.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
![極性を変えても順方向電圧はほとんど変わりません。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231172624.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
極性を変えて都合二回順方向電圧を測定しました。その結果、ほぼ同じ数値を示しました。したがって、このオペアンプは本物のne5532と考えて良さそうです。
②恐らく偽物のne5532
![オペアンプの真贋鑑定で、ne5532でないことは簡単にわかります。そして、やはり、にらんだ通り偽物の様です。順方向電圧は出ませんでした。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231172741.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
順方向電圧は出ませんでした。したがって、入力端子間にダイオードが入っていない、偽物オペアンプ確定です。
③ヤバいやつ
![オペアンプの真贋鑑定やってみましたが、やはりヤバいやつは、順方向電圧出ません。図る必要もない代物ですが、一応図りました。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231172850.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
見た目どおりのヤバいやつです。やはり、偽物でした。しかし、これは測らなくてもわかります。
④型番の刻印が怪しいnjm2114
![オペアンプの真贋鑑定で難しいのは、njm2114に代表される、ne5532からの派生です。そして、案の定ちょっと怪しいと思っていたnjm2114ですが、ちゃんと順方向電圧出ました。やはり、本物なのかな?](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231172935.jpg?resize=644%2C483&ssl=1)
![念のため、極性を変えて測ってみました](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/IMG20221231172947-1.jpg?resize=277%2C208&ssl=1)
ちょっと怪しいと思っていたのですが、順方向電圧はちゃんと出ています。でも、まだ怪しいので、次の鑑定に移ります。
オペアンプ真贋鑑定の神髄、スルーレートの計測
①本物だと思われるne5532
![オペアンプの真贋鑑定の神髄、スルーレートの計測をしてみました。しかし、例のダイオードで入力信号が制限されているためか、スルーレートの計測が上手くいきません。本物と思われるne5532 SR=4.4V/μs](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/1-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
入力電圧が例のダイオードによって制限されているため、出力振幅小さめです。したがって、あまり良くない条件での計測です。そのためか、スルーレートは4.4V/μsでした。
②偽物のne5532
![偽物のne5532 SR=1.98V/μs](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/2-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
③ヤバいやつ
![ヤバいやつ SR=1.78V/μs](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/4-1-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
④ちょと怪しいnjm2114
![オペアンプの真贋鑑定の神髄はスルーレート計測でしょう。やはり、ちょっと怪しいnjm2114 SR=6.16V/μsで、本物より随分低い値です。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/5-1-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
データシートによると、njm2114のスルーレートは15V/μsです。ですから、このオペアンプはnjm2114ではなく、旧JRCのnjm5532かと思われます。njm5532のスルーレートは8V/μsですので、何となくこれではないかと思われます。
ne5532の偽物は分かりやすかった
ne5532三種とnjm2114の真贋鑑定してみました。反転入力と非反転入力の間にあるダイオードの順方向電圧測定を最初にやりました。この方法はテスターがあれば簡単にできます。しかし、このダイオードによって、入力電圧が制限されてしまいます。そのため、十分な出力振幅が取れず、スルーレートの測定は上手くいきませんでした。したがって、今回の測定結果のうち、恐らく本物のne5532と怪しいnjm2114のスルーレートについては不正確です。
試験用回路の、電源電圧を上げ、負帰還量を減らせば、もう少しまともな数値が出ると思います。しかし、逆に偽物は見た目だけで、かなりの確度で判定できそうです。