アリエクの偽物オペアンプ

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アリエクの偽物オペアンプがまた増えました。年末にAliexpressに注文したTL072が本日届きました。しかし、残念なことに偽物でした。断言しても良いですが、アリエクで販売されているTL072は全て偽物です。そして、もし仮に本物があったとしても、それは滞留在庫です。いずれ本物のTL072はアリエクから姿を消します。

アリエクで偽物オペアンプしか流通していない理由

偽物オペアンプしか流通していない理由がわかりました。それは、テキサスインスツルメンツのHPに掲載されていました。

テキサスインスツルメンツは、オンライン市場で製品を買わないように呼び掛けています。
テキサスインスツルメンツの偽造防止対策

「ブローカー、独立系販売店、オンライン市場 (「グレー市場」とも呼びます) など、 TI の公認流通経路以外から購入された半導体製品は、偽造品であること・・・」とハッキリ書かれています。つまり、TIの製品はTIから直接買うか、正規代理店でしか買えないようです。

結果は想像できたけど真贋鑑定をしてみる

ということで、アリエクにTI社製品が存在しない理由が分かったので、真贋鑑定は必要ありません。しかし、返金の請求をするためのエビデンスを作る必要があります。まずは、マーキングを見てみます。

既に見慣れたロット番号です。ロット番号18MDSHYのTL072は偽物です。もっとも、アリエクのTI社製品は100%偽物です。
見慣れた偽物です ロット番号18MDSHYは偽物です

これまで何度も見てきた偽物と同じロット番号です。そして、これからステップ応答を計測して、返金請求の証拠資料を作ります。

偽物オペアンプはクロスオーバー歪みが出ることがあります。とても分かりやすい特徴です。オシロスコープが無くても、テスターだけで真贋鑑定を行う方法もあります。
クロスオーバー歪みが出ています 偽物の特徴です

既に見慣れた感のあるステップ応答計測結果です。水色の入力波形に対して、黄色の出力波形は形が崩れていることがわかります。そして、黄色のラインがグラフ中央の0V付近で水平の段がついているのが分かります。この、水平の段がクロスオーバー歪みです。

次に、スルーレートの計測をしてみます。スルーレートもオペアンプの真贋を判定する目安となります。

偽物オペアンプはスルーレートが低いです。このオペアンプのスルーレートは0.44V/μsでした。本物のTL072なら、13V/μsのはずです。
偽物オペアンプのスルーレートは0.44V/μsでした 本物なら13V/μsです

偽物オペアンプは、スルーレートが低いです。このオペアンプも0.44V/μsでした。しかし、本物のTL072であれば、スルーレートは13V/μsです。つまり、これだけ違っていると、真っ赤な偽物確定です。そして、これらの画像を添えて返金請求をします。

今後TIのオペアンプをどうやって入手すれば良いのか

幸いTIのオペアンプは、TIから直接購入することができます。また、RSやチップワンストップといった正規代理店からも買えます。さらに、代理店との提携をしているマルツオンライン等の販売店でも購入できます。しかし、これらの入手方法は、少量の購入の場合、かなり高めの価格になってしまいます。しかし、セカンドソース品ならば、比較的安価に購入できます。例えば今回購入したかったTL072であれば、UTCや日清紡マイクロデバイスの製品もあります。セカンドソース品ならば、少量でもリーズナブルに購入できます。また、性能もオリジナルと同等です。

手許に残ったアリエクの偽物オペアンプはどうすればよいか

手元には大量の偽物オペアンプが残りました。偽物は、本来ほしかった性能は出ません。しかし、性能を必要としない目的には使用できます。

手許に残った偽物オペアンプ 300個弱あります

例えば、以前実験したように、抵抗を1本追加して偽物オペアンプを使うことはできます。しかし、性能はほどほどです。また、偽物のTL072のタネになることの多い単電源オペアンプは、ノイズを拾い易い弱点があります。したがって、オーディオ用途には向きません。しかし、コンパレーターとして使うなら、むしろ両電源オペアンプよりも使いやすいです。また、電池駆動ならグランドからのノイズの回り込みも少ないはずです。

世の中には猛者もいる

海外のユーチューバーの方で、あえて偽物オペアンプを購入していらっしゃる方がいました。偽物の特性をしっかり理解すれば、無料で大量のオペアンプを入手できるというのです。実際に販売者にクレームを入れれば返金されます。しかも、受け取った偽物は返品する必要がありません。こうやって、無料で仕入れた偽物オペアンプで、電子工作を楽しんでおられる猛者がいるようです。

アリエクの偽物オペアンプ販売者は可哀そうなのか?

偽物を販売する業者は沢山あります。また、偽装したオペアンプを作り、偽物販売者に卸している業者も存在しています。では、なぜこのような業者が無くならないのでしょうか。答えは簡単です。それでも儲かるからです。想像ですが、受け取った商品が偽物であることを調べて返金請求する者は少ないのでしょう。したがって、多くが偽物であることを知らずに使っているのでしょう。あるいは、泣き寝入りをしているのでしょう。つまり、偽物販売が商売として成り立つから存在するのです。

せっかく仕入れた商品を売っても、送料を含めて返金しなければならない業者は可哀そうでしょうか? いえ、決して可哀そうではありません。偽物業者が得ているのは、購入者を騙して得た不当利得です。むしろ偽物を無くすために、積極的に返金要求をすべきでしょう。