mp3デコーダーの出力波形を観測してみた

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mp3デコーダーの出力波形を観測してみました。これまで、使ってきたmp3は安価で、使い勝手も良いものでした。そして、音質面もそれほど大きな不満は感じていませんでした。しかし、出てくる音声信号はどの程度の品質なのかを見てみたくなりました。そこで、手に入れた正弦波のwavデータを使って、出力波形を観察してみました。

出力波形を観察したmp3デコーダーは以下の3種類です。

出力波形の観測対象となった3種類のmp3デコーダーです。
出力波形観測対象のmp3デコーダー 左からデコーダー1,2,3とします

写真左側のデコーダー1は、過去に扱った120円のmp3プレーヤーです。しかし、このmp3プレーヤーですが、若干の改造を施しています。まず、スピーカー接続端子が撤去されています。そして、出力カップリング用のコンデンサーを交換してあります。

写真中央のデコーダー2は、過去に扱った177円のmp3デコーダーです。このmp3デコーダーは、部品が一つ欠落した状態で届いた不良品です。そのため、チップ抵抗を追加する改造を施しています。

写真右側のデコーダー3は、赤外線リモコン、FMラジオ、マイクが搭載されています。つまり、多機能型のmp3デコーダーです。

そして、今回は比較対象として、スマートホンと PC の出力波形も観測しました。

比較対象のスマホ,huaway nova lite2
mp3デコーダーの他に、スマホとノートpcの出力波形も観測しました。

波形観測に使用した音声データ

波形観測時に使用した音声データは、橋本技術研究所のHPから入手しました。そして、mp3デコーダーについては、ファイルをmicroSDに入れ再生しました。しかし、スマホについては諸藩事情により、アプリを使用しました。pcについては、foober 2000 でwabファイルを再生しました。そして、出力はwasapi 排他モードとしました。また、i/fはpc内蔵の Realtek audioとしました。

それぞれ、1kHzと20kHzの正弦波の出力波形を観測しました。

mp3デコーダー1の波形

1kHzの出力波形です。

デコーダー1、1kHz正弦波出力結果
mp3デコーダー1 – 1kHz正弦波出力波形

どうやら高周波成分が乗ってしまっているようです。確証はありませんが、ローパスフィルターが十分に機能していないと思われます。それにしても汚い波形です。

20kHzの出力波形

mp3デコーダー1,20kHz正弦波出力波形
mp3デコーダー1 – 20kHz正弦波出力波形

とても汚い波形です。小さく棘状見える山の数から、240kHz程度の信号が乗ってしまっているようです。恐らく、聴感に与える影響はそれほど大きくは無いと思います。しかし、気持ち悪いですね。このデコーダーの基板を眺めてみたのですが、ローパスフィルターと思われる部品は乗っていません。したがって、グランドと出力の間に設置されたコンデンサで、申し訳程度に対策をしているものと思われます。

mp3デコーダー2の波形

1kHzの出力波形

mp3デコーダー2の1kHz正弦波出力波形
mp3デコーダー2 – 1kHz正弦波出力波形

mp3デコーダー2の1kHz正弦波出力波形はとてもきれいです。そして、mp3デコーダー1の出力波形を見た後で、これを見るとホッとします。これなら、使い物になる感じです。

20kHzの出力波形

mp3デコーダー2、20kHz正弦波出力波形
mp3デコーダー2 – 20kHz正弦波出力波形

1kHzの時はきれいだった波形も、20kHzになるとヨレています。それでも、mp3デコーダー1よりは随分整っています。おそらく、この波形の乱れも、高周波成分が乗ってしまった結果ではないかと思います。やはり、ローパスフィルターが正しく働いていないのではないでしょうか。

mp3デコーダー3の波形

1kHzの出力波形

mp3デコーダー3,1kHz正弦波出力波形
mp3デコーダー3 – 1kHz正弦波出力波形

ひどい波形です。デコーダー1の波形と非常に似ています。しかし、これは高周波成分によるものです。したがって、聴感への影響は見た目ほど大きくないと想像します。しかし、気持ち悪いですね。

20kHzの出力波形

mp3デコーダー3、20kHz正弦波出力波形
mp3デコーダー3 – 20kHz正弦波出力波形

1kHzが汚い波形でしたので、20kHzも汚いです。しかし、このmp3デコーダー3ですが、mp3デコーダー2と同一メーカーのチップが使用されています。型番もデコーダー2がAC21BPで、デコーダー3はAS21BPです。近しいチップが使用されているにも関わらず、これだけの違いが出ています。そして、どちらの基板にもローパスフィルターと思われる部品は使われていません。なぜ、このような差が生じるのか分かりません。

スマホの出力波形

1kHzの出力波形

スマホの1kHz正弦波出力波形
スマホの1kHz正弦波出力波形

スマホ上でファンクションジェネレーターアプリを使って1kHzの正弦波を出力しました。出力波形は概ねきれいなのですが、所々にスパイク状のノイズが見られます。

20kHzの出力波形

スマホの20kHz正弦波出力波形
スマホの20kHz正弦波出力波形

波形の所々に段が見られます。原因は分かりませんが、ローパスフィルターが正しく働いていないためかも知れません。ただ、これまで見てきた、どのmp3デコーダーよりもまともな波形です。

pcの出力波形

1kHzの出力波形

PC1kHz正弦波出力波形
PC – 1kHz正弦波出力波形

見事な波形です。乱れもありませんし、ノイズも見られません。この観測に使用したPCは、どちらかといえば低スペックで安価なものです。したがって、オーディオインターフェイスも低位の部品が使われていると思います。しかし、出てきた波形は非常にきれいです。

20kHzの出力波形

PC、20kHz正弦波出力波形
PC – 20kHz正弦波出力波形

20kHzの出力波形も見事です。これまで、PCは音が悪いという先入観しかありませんでした。しかし、出てきた波形に乱れは無く、ノイズも見られません。もちろん、波形の美しさと音の良さがイコールであるとは思っていません。しかし、乱れの無い波形、ノイズの無い波形は原音に忠実であるはずです。

そして、波形の乱れが音に特徴をもたらしている可能性はあります。原音に忠実で、無味乾燥な音が良いのか? それとも、原音に一定の味付けがされた音が良い音なのか? それを決めるのは個々人が行うことなのでしょう。

残された懸念事項

今回の波形観測で残念な結果となった、mp3デコーダー1ですが、個人的には好きです。むしろ、先入観の為か、pcから出てくる音はあまり好きになれません。不思議なものです。しかし、今回の波形観測で一つの懸念事項があります。それは、全ての波形観測は、無負荷の状態で行っていることです。負荷によって、出てくる波形が変わることもあるでしょう。そして、今回使用したmp3デコーダーのような小出力なデバイスでは一層顕著になるはずです。