lm386最終形態
![](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/IMG_20230214_130306.jpg?fit=1024%2C768&ssl=1)
lm386最終形態のアンプを作ってみました。試作段階では、ノイズと発振に悩まされました。しかし、何とか解決したアンプを前回作りました。しかし、ステップ応答の結果には、大きな問題がありました。そして、今回はこの問題点を解決してlm386最終形態のアンプを作ってみたいと思います。
ステップ応答試験で発覚した問題点
前回は、lm386の弱点である発振のしやすさとノイズを解決しました。しかし、ステップ応答試験で大問題が発覚しました。それは、出力波形を見れば一目瞭然です。
![lm386を使用して作成したアンプに1kHzの矩形波を入力したときの出力波形です。本来水平にならなければいけない部分が斜めになっています。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/3-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
本来であれば、水平にならなければならない部分が斜めになっています。今回はこれを解決し、lm386最終形態のアンプに仕上げてみたいと思います。
ノイズと発振は既に解決済、残すは歪みだけ
試作時点ではノイズと発振に悩まされたlm386ですが、負帰還というオーソドックスな手法で解決しました。これは、正弦波の出力波形を見ても明らかです。
![正弦波入力時の出力波形。ノイズや発振は見られない。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/2-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
正弦波を増幅した時の出力波形に乱れは無く、発振もノイズも抑えられていることがわかります。その一方で、矩形波入力時の波形に乱れがあるということは、歪みが発生しているということになります。つまり、音を濁す三つの要因、ノイズ、発振、歪みのうち、歪みだけが残った状態です。これで、方針は決まりました。歪を上手く取り除けば、究極のアンプになるわけです。
歪みも負帰還で消すことができる
ノイズは、入力インピーダンスを下げることで消しました。そして、発振は負帰還を使って抑え込みました。そして、残るひずみも負帰還で消すことができます。先ずは、歪みの正体を分析しなければいけません。1kHzの時は盛大にひずみが出ていました。しかし、20kHzの矩形波ではほとんど歪みは見られませんでした。
![20kHz矩形波入力時の波形](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/5-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
つまり、高い周波数成分に比較して、低い周波数成分が抑え込まれていないわけです。つまり、周波数特性が低域寄りになっているわけです。したがって、低域側も高域側と同じくらい抑え込めば良いわけです。つまり、低域成分をもう少し多めに反転入力に帰還してあげれば解決するはずです。
回路の再設計でlm386最終形態を目指す
そして、出来上がった回路がこれです。
![負帰還回路の定数を見直すことで、歪みの低減を図りました。](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/スクリーンショット_20230214_141319.png?resize=644%2C273&ssl=1)
前回の回路をもとに、手直しを行いました。改良箇所は二か所です。先ずは、帰還抵抗R2を5.8kΩから6.8kΩに変更しました。また、帰還抵抗と直列するC3を47nFから10μFに変更しました。これにより、負帰還のカットオフ周波数を2Hzに下げました。これで、概ねフラットな負帰還がかかることになり、歪みは激減するはずです。
注)回路図中のRLoadはスピーカーにあたります。また、R4とR1は一つのボリュームに置き換えてください。
lm386最終形態の性能を確認する
負帰還回路以外の変更はありませんので、改造は簡単でした。では、早速改良の結果を見ていきましょう。
先ずは20kHzの矩形波入力時の出力波形です。
![20kHz矩形波入力時の出力波形](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/矩形波20kHz-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
依然としてオーバーシュートが出ています。しかし、オーバーシュートを除けば、スッキリとした矩形波が出ています。
次に10kHz矩形波入力時の出力波形です。
![10kHz矩形波入力時の出力波形](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/矩形波10kHz-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
やはり、オーバーシュートが気になります。しかし、立ち上がりも立下りも急峻で、乱れはほとんど見られません。
そして、5kHz矩形波入力時の出力波形です。
![lm386最終形態のの本領発揮。5kHz矩形波入力時の出力波形](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/矩形波5kHz-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
このくらいまで周波数が下がってくると、オーバーシュートは目立たなくなります。また、波形自体は見事に整っています。
そして、問題の1kHz矩形波入力時の出力波形です。前回のステップ応答試験では、波形に大きな乱れが見られました。
![lm386最終形態完成か?1kHz矩形波入力時の出力波形](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/矩形波1kHz-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
言うことはありませんね。素晴らしい波形です。狙い通りの結果が出ました。
もっと低い周波数も見てみましょう
ここから先は蛇足ですが、もう少し下の周波数も見ていきましょう。では、500Hzです。
![500Hz矩形波入力時の出力波形](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/矩形波500Hz-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
水平でなければならない横方向の線が、ほんの少しだけ傾き始めました。しかし、このくらいなら気にならないでしょう。
そして200Hzです。
![200Hz矩形波入力時の出力波形](https://i0.wp.com/pooq.biz/wordpress/wp-content/uploads/2023/02/矩形波200Hz-644x386.jpg?resize=644%2C386&ssl=1)
やはり、このくらいまで周波数を下げると、負帰還量の不足が現れ始まます。しかし、この先は好みの問題でしょう。もし、低域の量感を好むならば、負帰還回路のコンデンサを少し小さくすると良いでしょう。そして、もっとフラットな特性を求めるなら、負帰還回路のコンデンサを大きくすると良いでしょう。
lm386最終形態完成です
最初はlm386のノイズと発振のしやすさに悩まされました。しかし、負帰還というオーソドックスな手法でこれらを解決できました。また、盛大に発生していた歪みも負帰還回路の見直しで改善できました。その結果、何とか満足できるアンプに仕上げることができました。
lm386は使い古されたICですが、使いこなしは難しいと感じました。そして、使いこなしの難しさがlm386は音が悪いという印象につながっているのでしょう。
今回作ったアンプは、lm386最終形態ではないかと自負しています。実際に聴いた感じも、フラットに感じました。また、今回使ったlm386は偽物ではありましたが、セカンドソースのnjm386のコピーでした。したがって、バイパス端子を使用しなければ本家lm386と全く同じ動作をします。したがって、今回設計した回路は本物のlm386でも同じ結果を出してくれます。