njm2073のノイズを消す

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今回はnjm2073のノイズを消します。前回、njm2073のセカンドソース品m2073を使って、ヘッドホンアンプを作りました。しかし、ヒスノイズは消すことができませんでした。今回は、課題となっていたヒスノイズを消してみようと思います。

m2073(=njm2073)発振対策まとめ

ノイズを消す前に、m2073(=njm2073)発振の原因についておさらいしたいと思います。データシートでは、増幅率を26dB以下にすると発振すると記載されていました。そして、前回作成したヘッドホンアンプは26dBギリギリを攻めた結果、特定の条件で発振しました。

この発振を無くすために、反転入力と非反転入力の両方にコンデンサを取り付けました。コンデンサと抵抗を並列に配置することで、簡易なハイパスフィルターを構成したわけです。これにより、発振の原因となる高周波信号をグランドに逃がすことで発振を止めることができました。

ノイズを消すために増幅率を下げたい

njm2073の利得は44dBです。倍率に換算すると、158倍です。つまり、入力信号を158倍に増幅します。また、信号と同時にノイズも158倍に増幅してしまいます。これが、njm2073の欠点であるノイズの多さにつながっているはずです。ですから、増幅率を実用性を失わない範囲で小さくすればノイズは減るはずです。しかし、データシートには、増幅率を26dB以下にすると発振すると記されています。

発振を抑れば増幅率を下げられるのでは?

そこで思いつきました。発信防止の方法は分かっています。ですから、発信防止と増幅率の低減を同時に行えば、発振とノイズを同時に消せるはずです。早速、回路の検討をしてみました。

発振とノイズを同時に消す

発振対策は、入力端子にコンデンサを入れるだけです。そして、ノイズ対策は負帰還量を多くして増幅度を下げれば良いわけです。また、増幅度が低くなるので、前回入力に入れていたアッテネーターは省略できるはずです。ということで、方針は決まりました。そして、出来上がった回路図がコレです。

njm2073のノイズ対策回路
njm2073ヒスノイズ対策回路

注1)回路図中のR5、R6は可変抵抗器に置き換えてください。R3につながる端子が可変抵抗器のワイパーになります。

注2)RLoadは出力側の機器=スピーカーに置き換えてください。

変更点は、負帰還回路を構成するR2を4.7kΩから1kΩに変更しました。そして、R3を510Ωから1kΩに、C6を22nFから10nFに変更しました。また、アッテネーターを構成していた抵抗も削除しました。

この変更で、増幅率は25.83dBから、15.05dBに減少します。つまり、増幅率は10.7dB減となります。また、アッテネーター撤去により、njm2073に流入する信号レベルは6dB高くなります。つまり、ノイズは相対的に6dB小さくなるわけです。これら二つを合わせて、S/N比は16.7dBの改善となるはずです。また、回路全体のインピーダンスは下がりますので、外来ノイズも拾いにくくなるはずです。

ユニバーサル基板上に回路を組んでみました

njm2073のノイズが本当に消えるのか?検証のため、njm2072使用ヘッドホンアンプを作りました。
ユニバーサル基板上に組んだnjm2073使用ヘッドホンアンプ

実際にイヤホンをつないで聞いてみました。ノイズは、全く無くなったというほどではありません。しかし、注意深く聞かないと聞こえないレベルにまで抑えられています。しかも、このノイズは入力ソースからの信号によって簡単にマスクされますので、気になることは全くありません。

njm2073ノイズ対策アンプの出力をオシロで見てみる

聴感上のノイズは、満足できるレベルまで抑え込むことができました。しかし、この対策により発振などの副作用が出ていないか、出力波形を見て確認します。

先ずは20kHz正弦波入力時の出力波形です。

njm2073のノイズ対策結果確認。20kHz正弦波入力時の出力波形
20kHz正弦波入力時の出力波形

きれいに整った波形です。言うことなしです。

次に周波数をぐっと下げて、10Hz正弦波入力時の出力波形を見てみます。

njm2073のノイズ対策結果確認。10Hz正弦波入力時の出力波形
10Hz正弦波入力時の出力波形

10Hzまで周波数を下げても振幅はほとんど変わっていません。つまり、10Hzから20kHzまで、フラットに増幅出来ています。低価格なICでもここまでフラットな特性が出せるのは驚きです。

njm2073ノイズ対策アンプのステップ応答

矩形波を入力して、ステップ応答も確認してみましょう。先ずは20kHz矩形波入力時の出力波形です。

njm2073のノイズ対策結果確認。20kHz矩形波入力時の出力波形
20kHz矩形波入力時の出力波形

ちょっと残念な感じです。立ち上がり部分にリンギングが出ています。しかし、このリンギングの周波数成分は300kHz近辺で、可聴域から大きく離れています。したがって、聴感に影響を与えることは無いでしょう。

次に1kHzの矩形波入力時の出力波形です。

njm2073のノイズ対策結果確認。1kHz矩形波入力時の出力波形
1kHz矩形波入力時の出力波形

発振防止のために、非反転入力端子に接続したコンデンサの影響で、わずかに立ち上がりに遅れが見られます。しかし、この程度なら影響は無いと思います。

次に100Hz矩形波入力時の出力波形を見てみます。

100Hz矩形波入力時の出力波形
100Hz矩形波入力時の出力波形

ここでは、出力側に挿入した直流ブロック用コンデンサの容量が十分か否かが分かります。100Hzまで周波数を下げても、わずかな乱れしか現れていません。したがって、出力側カップリングコンデンサの容量は十分と判断できます。

njm2073は概ね攻略できました

ネット上でnjm2073について調べると、ノイズが多いという意見が多数見られます。確かに、素のnjm2073は増幅率が高すぎるように感じます。そして、この高い増幅率により、信号と一緒にノイズも増幅されます。その結果としてノイズが多いという評判につながっているのでしょう。

これを解決するには、増幅率を低くすれば解決します。しかし、オーソドックスな方法で増幅率を下げようとすると、簡単に発振してしまいます。もちろんデータシートには、発振対策の方法は記載されています。しかし、前回ためした結果、副作用が多いことが解りました。そして、手あたり次第に対策を模索した結果が、今回作ったヘッドホンアンプです。

手探りでの対策でしたが、何とか満足できる結果が出せました。最初はダメだと思っていたnjm2073ですが、上手に使えば、高いパフォーマンスを発揮してくれることが解りました。