『岸田総理の大嘘』三橋貴明著

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三橋貴明氏の著書、『岸田総理の大嘘』について書いてみたいと思います。この本は、以前読んだ『日本滅亡論』と同じく、積極財政による経済のテコ入れを訴える内容です。また、本書では、なぜ財務省は緊縮財政を固持するのかに斬りこんでいます。

「輸入価格上昇」の知られざる真実

本来、生産、支出、所得の総額は同一の額となります。そして、GDPとは総生産ですから、GDP=総支出=総所得となります。そして、これをGDP三面等価の原則と呼びます。しかし、GDP三面等価の原則は、国内では成立しません。それは、貿易が存在するからです。現在の日本は、所得は増えずに支出が増大した状態です。では、増大した支出はどこに消えたのでしょう。それは、LNG等の資源産出国に移動し、生産者の収入を増やすことに使われました。

本来、インフレは、デフレの解消に役立ちます。しかし、輸入品の値上がりによるコストプッシュ型インフレはデフレの解消に寄与しません。

デマンドプル型インフレとデフレ

コストプッシュ型インフレと逆の性格を持つのが、デマンドプル型インフレです。これは、消費が生産を上回ることによるインフレです。好景気により旺盛となった需要に、生産が追い付かない状態です。つまり、”生産<需要”の状態です。これの対局にあるのがデフレで、”生産>需要”の状態です。つまり、デフレとはモノ余りの状態です。

所得が増えないのはデフレだから

GDP三面等価の原則により、支出が増加すれば所得も増えるはずです。しかし、現在の日本は、輸入品の値上がりによって支出は増えても、所得が増えないデフレ真っ最中です。また、デフレ=モノ余りの状況で、製造業は生産増強のための投資を行うはずもありません。そのため、金融機関による融資も停滞しています。その結果、融資されずに、行き場を失ったカネは、日銀当座預金に集まります。そして、日銀当座預金の総額は570兆円に膨れ上がりました。つまり、モノ余り、カネ余りの状況が続いています。カネ余りの状況で、日銀は利上げできるはずもなく、結果としてGDPの伸びは望めず、円安に甘んじなければなりません。

財務省の覇権拡大により公共事業は止まった

本来、ガソリン税は国交省の特別会計予算として、道路整備だけに使われていました。しかし、今は一般会計予算に組み入れられ、国交省は財務省に頭を下げて道路整備の予算を獲得しなければなりません。同じく、福祉の充実という金科玉条の下に導入された消費税は一般会計予算に組み入れられ、使途は不明です。本来、景気停滞期には公共事業を行って、市場にカネを注入するのがあるべき財政です。ここでもう一度DGP三面等価の原則を思い出してください。公共事業で生産が増えれば、所得が増え、消費も増えます。しかも、海外への流出もありません。

つまり、財務省が緊縮財政を執り続けている限り、日本はデフレから脱却できないのです。

なぜ財務省はシブチンなのか?

2015年、財務省は「骨太の方針2015」を打ち出し、時の政府はこれを閣議決定してしまいました。そこには、言葉巧みに後の三年間の歳費増加を1000億円(社会保障費を除く)に限定する旨の文言が含まれていました。つまり、公共投資額の増分を全省庁一切合切まとめて年間約300億円にキャップしてしまいました。この方針の期限となる2018年以降もこの方針は引き継がれました。しかし、高市政調会長らの強い意向で、「骨太の方針2022」では、次の一文が加えられました。

「ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。」

この一文があるにもかかわらず、岸田総理は積極財政への方針転換せず、増税でDGP=国力を失わせようとしています。

根強い財政破綻論

国債の発行により、日本は財政破綻を引き起こすという論者がいます。しかし、独自通貨を持ち、自国通貨建て国債を発行する国は、国債の償還ができない、所謂デフォルトを起こすことはありません。なぜなら、償還に使う資金が日銀の金庫になければ、日銀が新たに国債を引き受け、紙幣を印刷すればよいのです。

財源=税収ではない

我々が税金として納付したお金はどこへ行くのでしょうか。それは、国債の償還に使われます。つまり、税収の分だけ、発行済み国債が減る、ただそれだけです。では、政府の財源はどこから来るのでしょうか?それは、政府が発行する政府短期証券や国債を日銀(正確には日銀だけではないが)が引き受け、諸経費を差し引いた額を日銀が国庫に納めることで賄われます。

そもそも、年度ごとに増減する不安定な税収を、安定財源として使えるはずがないのです。つまり、財源=税収ではないのです。しかし、日経新聞には国債の発行によって、国民の預金が吸い上げられる。あるいは、国債の償還が出来ずに日本は破綻するという記事が度々掲載されます。これは、財務省の御用メディアに成り下がった日経新聞が、財務省に言われるままに書いた記事であることは容易に想像がつきます。そもそも、国民の預金は預金保険機構によって保全されています。また、前述のとおり、日本の国債がデフォルトすることは無いのです。

国債発行残高の意味するもの

本書では、正しい貨幣観を持つことが大切であると説いています。これについては、少々長くなりますが、本文から引用したいと思います。

-『岸田総理の大嘘』からの引用-

無論、全ての国民が正しい貨幣観を身に着けるのは、相当に困難である。ならば、せめて政治家だけでも、正しい貨幣観を身に着けてほしい。

現在の日本には、政府支出において「制約」はない。国民を救うために、国債発行と政府支出をして構わない。というか、やらなければならない。

さらに、国債発行残高は「国の借金」とやらではなく、「政府が過去に国民の銀行預金を増やすという形で発行した貨幣」の履歴にすぎないのだ。

積極財政支持者による有態な論文

以前読んだ『日本滅亡論』と論旨は同じで、日本がデフレの苦しみから抜け出すため。そして、経済成長の道を今一度歩み始めるための処方が積極財政であると説いています。しかし、別の見方をすれば、デフレであれば今持っているお金の価値は下がりません。しかし、インフレになれば手持ちのお金の価値が下がることになります。経済成長により、今手許にあるお金の価値が下がるよりも、デフレでお金の価値が保たれる方を選ぶ層もあるでしょう。これって、意地悪な見方でしょうか?