ディスクリートヘッドホンアンプ一応完成

Spread the love

ディスクリートヘッドホンアンプの回路見直しを行っていました。そして、満足できる性能が出ました。したがって、ディスクリートヘッドホンアンプは、これで一旦おしまいにします。当初は、ステージ間のカップリングコンデンサによる、低域の制限を懸念していました。しかし、前回制作したもので、聴感上不都合は感じられませんでした。したがって、今回の見直しは限定的です。

見直し後の回路図

ディスクリートヘッドホンアンプ回路図
ディスクリートヘッドホンアンプ回路図

今回はちゃんとステレオ2チェンネル分書いてみました。例によって、LTSpiceで書いていますので、抵抗シンボルが古い形だったりします。また、可変抵抗器のシンボルがありませんので、注釈を入れておきました。L-ch_LoadとR-ch_Loadは、接続するヘッドホンやイヤホンに置き換えてください。なお、入力側グランドと出力側グランドは共通ではありません。また、1/2Vccの電位差がありますのでご注意ください。

見直しのポイント

今回の見直しのポイントは以下の3点です。

  1. 電圧増幅部の出力電流増加
  2. ステージ間カップリングコンデンサ容量増加
  3. 電力増幅部バイアス回路低電流化

電圧増幅部に関しては、エミッタ抵抗とコレクタ抵抗を小さくすることで、出力電流を多くしました。これにより、電圧増幅トランジスタに4mA程の電流が泣かれることになります。使用したトランジスタBC547のデータシートによれば、最大コレクタ電流は100mAですので大丈夫そうです。電力についてもデータシート記載の625mWに納まります。

次に、カップリングコンデンサを、以前の4.7μFから10μFに変更しました。しかし、カップリングコンデンサの変更により、電源投入時のポップノイズが大きくなりました。一方、カットオフ周波数は10Hzから6Hzに下がりましたが、聴感上の変化はありませんでした。したがって、カップリングコンデンサは4.7μFが良いかと思います。

電力増幅部のバイアス回路のプルアップ、プルダウン抵抗を2.2kΩから3.3kΩに変更しました。これでも、十分なオフセットが得られ、クロスオーバー歪みの無いことを確認しました。

性能確認

基本的な性能については、以前作成したディスクリートヘッドホンアンプと同じです。したがって、ここでは要点のみ簡単に紹介します。先ずは、スルーレートです。

ディスクリートヘッドホンアンプのスルーレート計測
スルーレート計測

スルーレートは26V/μsでした。オーディオアンプとしては、余裕で合格点がもらえるレベルだと思います。ちなみに、100kHzの矩形波を入力したときの出力波形はこんな感じです。

ディスクリートヘッドホンアンプ矩形波100kHz
矩形波100kHz

さすが、スルーレートが26V/μsもありますから、ステップ応答も見事です。また、オーバーシュートやリンギングも全くられません。美しい波形です。

正弦波ですと、上は1MHzくらいまでは余裕で増幅出来ます。

ディスクリートヘッドホンアンプ正弦波1MHz
正弦波1MHz

絶対いらない無駄な性能ではありますが、1MHzでもビシッと増幅してくれます。次に、低い方を見てみましょう。先ずは基準とした1kHzです。

ディスクリートヘッドホンアンプ正弦波1kHz
正弦波1kHz

そして、設計上のカットオフ周波数6Hzの結果を見てみましょう。

正弦波6Hz
正弦波6Hz

6Hzのときの振幅3.23Vは1kHz時の振幅4.14Vに対して-2dBですから、カットオフ周波数は設計よりも少し低いようです。

ディスクリートヘッドホンアンプの印象

作成したディスクリートヘッドホンアンプを音楽ソースに接続してみました。そして、出てきた音には、全く味付けはありません。ソースに忠実なアンプがお好みであればバッチリです。これは、出力波形を見てもわかる通り、このアンプは入力信号の振幅だけを増加させます。そういった意味では、アンプの音を楽しみたい人には向いていないでしょう。全く味付けの無い音は、これ以上シンプルにできないほどシンプルな回路によるものでしょう。

そして、今回は動作電圧と電流についても簡単に測定してみました。設計上の12V時の電流は26mAでした。そして、電池駆動も考慮して、電圧を落としての検証もしてみました。9V時の消費電流は20mA、6V時の消費電流は17mA程でした。一応4V程度まで下げても動作はしましたが、出力がクリップしやすくなり、音量が取れませんでした。実用となるのは6Vから14Vくらいでしょう。屋外で使う場合には、006Pで動作させると良いと思います。消費電力は180mW程度ですから、4~5時間は稼働すると思います。