潤滑防錆スプレーについての考察

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潤滑防錆スプレーと言えば、KURE 5-56を思い浮かべる方も少なくないと思います。勿論、KURE 5-56以外にも沢山あります。有名どころではWD-40あたりではないでしょうか。そんなありふれた潤滑防錆スプレーの使用用途や、好ましくない使い方について考えてみたいと思います。

今回集めてみた潤滑防錆スプレー

自分自身も含めて、潤滑防錆スプレーの正体を知らない方は多いと思います。そこで、簡単に入手できる潤滑防錆スプレーを集めてみることにしました。今回買い集めてみた潤滑防錆スプレーは5種類です。

買い集めた潤滑防錆スプレー5種
買い集めた潤滑防錆スプレー5種

画像左側から、①KURE 5-56、②エーゼットOIL SPRAY YELLOWⅡ、③CAINZ においの少ない潤滑スプレー、④ダイソー 潤滑防錆スプレー、⑤キャンドゥ 潤滑サビ防止スプレーです。

潤滑防錆スプレーの成分は?

今回買い集めた潤滑防錆スプレーの成分を表にまとめてみました。成分の記載順序は、製品の記載に合わせました。

名称KURE 5-56OIL SPRAY YELLOWⅡ潤滑スプレー潤滑防錆スプレー潤滑サビ防止スプレー
販売呉工業エーゼットカインズ大創産業モリトク
成分鉱物油、防錆剤、石油系溶剤鉱物油、石油系溶剤、防錆剤鉱物油、石油系溶剤、防錆剤鉱物油、石油系溶剤、防錆剤石油系油剤、防錆剤
油種第三石油類(鉱物油、ケロシン)230ml第四類第二石油類160ml第四類第二石油類190ml第一石油類39ml第2石油類48ml
内容量384ml420ml420ml75ml70ml
潤滑防錆スプレー、内容一覧

今回買い集めた潤滑防錆スプレーの成分を見てみると、全て共通のようです。鉱物油(潤滑油だと思います)、防錆剤、石油系溶剤が、その主成分であることが解ります。「潤滑サビ防止スプレー」だけ、石油系溶剤の記載がありません。しかし、恐らく潤滑油と石油開溶剤をまとめて、石油系油剤と表記していると思われます。その根拠として、可燃性油種として、第2石油類が記載されています。

成分から見る潤滑防錆スプレーの機能

今回用意した潤滑防錆スプレーは、例外なく三つの成分が含まれています。それは、鉱物油、石油系溶剤、そして、防錆剤です。鉱物油は、恐らく潤滑油でしょう。そして、防錆剤はその名の通り、錆を防止する目的で配合されていると思われます。

そして、残る石油系溶剤の機能について考えてみたいと思います。まず、KURE 5-56については、ケロシンと明記されています。次にOIL SPRAY YELLOWⅡに関しては、第二石油類と記載されていますので、ケロシンや軽油のようなものと思われます。これは、カインズの潤滑スプレー、モリトクの潤滑サビ防止スプレーも同様です。

ダイソーの潤滑防錆スプレーは第一石油類と記載されています。したがって、ヘキサンやベンゼン等の揮発油が配合されていると思われます。ケロシン(=灯油)やヘキサン等は、洗浄効果がある揮発性の油です。特にKURE 5-56は内容量の2/3がケロシンです。したがって、洗浄効果に重点を置いているように思います。

つまり、潤滑防錆スプレーは、洗浄効果、防錆効果、潤滑効果を備えたものと言えるでしょう。

似た成分の商品

呉工業の接点復活スプレーは、KURE 5-56と成分が似ています。勿論、配合比率や具体的な内容物は異なっている可能性はあると思います。

呉工業の接点復活スプレーの成分が5-56と似ている
呉工業の接点復活スプレーの成分が5-56と似ている

接点復活スプレーの商品説明を見ると、「ゴム・プラスチックにかかっても安心」と書かれています。KURE 5-56はゴム・プラスチックへの使用はできないことになっています。したがって、石油系溶剤の種類が異なっていると思われます。

接点復活スプレーの商品説明
接点復活スプレーの商品説明

実際、KURE 5-56のCMでは、電気接点へ使用することで、接触不良を改善できるとされています。したがって、樹脂部分にかからないように配慮すれば、KURE 5-56等のスプレーで代用できそうです。電気接点に少量かけて、布でふき取ったところ、今回集めた全てのスプレーで接点の金属光沢が戻りました。

次は、少し苦しいですが、ラベルはがしに代用できそうです。

モノタロウのラベルはがしスプレー
モノタロウのラベルはがしスプレー

ラベルはがしスプレーは、石油系溶剤を使用したものが多いようです。潤滑防錆スプレーも石油系溶剤を含んでいますので、ラベルはがしに使用できるでしょう。しかし、レベルはがしスプレーの方は水溶性の接着剤にも対応できるようにアルコールを含んでいます。また、潤滑防錆スプレーには、揮発性のない鉱物油が含まれていますので、シミが残る可能性があります。

WD-40は殺虫剤としても使えるらしい

米国でポピュラーな潤滑防錆スプレーWD-40には2000の用途があるらしいです。その中でも、殺虫剤の代わりに使うという動画を見ました。あれだけジャブジャブ使えばゴキブリもイチコロですよね。恐らく、KURE 5-56でもゴキブリ駆除はできるのではないでしょうか。

使ってはいけないところ

今回考察してみた潤滑防錆スプレーですが、使ってはいけない場所もあります。一部のプラスチックは、石油系溶剤によって脆くなります。また、ゴムは膨張と硬化を生じる可能性があります。樹脂部分にかかってしまったら、ふき取っておくと良いと思います。

自転車のチェーンに使用すると、グリスを洗い流して、逆効果という意見もあります。しかし、自転車のチェーンはシールドされていませんので、樹脂製のシールを痛めることは無いでしょう。また、負荷もそれほどではありませんので、問題ないと思います。実際にKURE 5-56の商品説明では、用途には自転車チェーンが含まれています。KURE 5-56以外の潤滑防錆スプレーについても同様と考えてよいでしょう。

その他、鍵穴に使用すると、埃を吸着し、動きが悪くなるといわれています。しかし、色々と情報を探してみてみましたが、ほぼすべてのケースで使用量が不適切です。それこそ、鍵穴にジャブジャブ吹き付ければ、埃を呼んでしまうでしょう。控えめに使用すれば問題ないと思います。そして、成分の大部分は揮発性の石油系溶剤です。したがって、適量の使用に留めれば、ほとんどは揮発して無くなってしまうはずです。

極圧剤は入っていないので、面圧の強い場所はNGです

潤滑スプレーとしては、ベルハンマーとかCKM-001のような、極圧性能を強調した商品があります。また、リチウム石鹸やウレア等の極圧性の基材を含んだスプレーグリスもあります。これらは、高い荷重がかかる場所でも油膜を保持します。その一方で、潤滑防錆スプレーには、極圧剤が含まれません。したがって、高荷重の場所に使うと、カジリを生じます。実際に、折たたみナイフの摺動部に使用したところ、逆に動きが悪くなりました。

潤滑防錆スプレーは便利です

潤滑防錆スプレーは安価です。そして、性質を理解しておけば有用な品物だと思います。一家に一本、備えておくと良いでしょう。