ケーブルで音は変わるのか?
ケーブルで音は変わるのか?この疑問の検証を行ってみました。太いケーブルは良い音がします。また、そのケーブルが高価であればあるほど良い音がします。また、老舗メーカーの製品であればより一層良い音がします。しかし、どのくらい良い音がするのでしょうか?なぜ、ケーブルで音が変わるのか、その理由に迫ってみたいと思います。
ケーブルで音は変わるのか?比較する4本のケーブル
音の良さは100%主観です。したがって、聞いて感じた感想を並べたところで説得力はありません。そこで、客観的に信号波形がどのように変化するか、測定します。その測定結果から、なぜ、ケーブルを変えると音が変わるのかを考察してみようと思います。今回は、ヘッドホンアンプと再生機器を接続するケーブルで検証をしてみます。
比較する対象のケーブルは、手持ちの4種類のケーブルです。
上の写真が、比較対象として用意した4本のケーブルです。以下がそれぞれのケーブルの素性です。
- ステレオシールドケーブル(AWG24×2+シールド、ケーブル長15cm)
- ステレオシールドケーブル(AWG24×2+シールド、ケーブル長20cm)
- 市販ヘッドホンアンプ付属のケーブル(3芯平行線、ケーブル長45cm)
- 破損したイヤホンのケーブル部分(LC-OFC4芯撚り線、ケーブル長74cm)
静電容量の測定
音を変える要素の一つが静電容量だと思います。そこで、各ケーブルの静電容量を測定します。条件を揃えるため、Φ3.5mmプラグのグランド(コールド側)と左チャンネル(ホット側)の静電容量を測定します。しかし、静電容量の測定は測定機器やプローブの影響が少なくありません。そこで、今回は二種類の測定器を使用しました。また、プローブによる影響をできるだけ少なくできるように、短いプローブを自作しました。
静電容量測定結果
テスターでの測定の方が、低めの値を示す傾向があります。以下に全てのケーブルの測定結果を示します。
測定対象ケーブル | テスターでの測定結果 | バーツチェッカーでの測定結果 |
①シールド線 | 37pF | 42.7pF |
②シールド線 | 54pF | 56.36pF |
③平行線 | 43pF | 46.57pF |
④撚り線 | 78pF | 73.92pF |
ケーブルの静電容量は意外と大きいようです。特に、シールドケーブルの静電量量は、長さの割に大きいです。しかし、並行ケーブルの③はシールドケーブルの二倍以上ある長さの割に小さな値を示しました。
ケーブルによる波形の変化
ケーブルによって、信号は鈍るように感じます。しかし、実際はどうなのでしょうか。矩形波をケーブルの一端から入れ、反対側で波形を測定し、波形の変化を観察します。以下に示す画像の、黄色の線が入力端での波形です。そして、水色の線がケーブルの出力端での波形です。
シールドケーブルを使用した①と②は入力に対し、出力が進相されていることが解ります。
ケーブル③と④は並行ケーブルと撚り線です。どちらも、入力に対して、出力信号の立ち上がりが急峻になっています。シールドケーブルでは、入力信号と出力信号は並行で、波形の変化はありませんでした。しかし、並行線と撚り線では、入力信号と出力信号は同一形ではなく、波形が変化しています。つまり、シールド線では発生しない歪みが、並行線や撚り線では発生することが解ります。
この歪みがケーブルによって音が変化する原因の一つではないかと思います。
ケーブルで音は変わるのか?→ケーブルの構造で音は変化する
ケーブルで音が変わる理由が少しわかったような気がします。例えば、アンテナ線がそうであるように、特性だけを考えればシールド線一択でしょう。しかし、高級なオーディオケーブルが撚り線や平行線なのは、信号に歪みを加えるためかも知れません。上手に加えられた歪みは、音に艶を与えることがあります。
実際に波形を観察するまでは、ケーブルの静電容量によって音が鈍ると思っていました。しかし、実際には並行線や撚り線では立ち上がりが急峻になることが解りました。その一方で、シールド線では進相されるものの、波形に変化はありませんでした。これが、シールド線が高周波用途に多く使われる理由でしょう。しかし、シールドケーブルは味付けが無く、音に艶という名の歪みを与えることがありません。したがって、特性より味を楽しむ高級オーディオではシールド線があまり使用されないのかもしれません。