KZ ZVXは、ある意味常識外れだった
KZ ZVXというイヤホンが安売りされていたので入手しました。KZのイヤホンのモデル名には規則があります。EDRやEDXなどEから始まる型番は、ダイナミックドライバのイヤホンです。そして、AS16やASXなどのAから始まるイヤホンは、バランスドアーマチュアドライバで構成されたイヤホンです。そして、ZSTやZSNなどの、Zから始まるものは、ハイブリッド型です。ハイブリッド型は、ダイナミックドライバとバランスドアーマチュアドライバの両方を使用しています。しかし、今回購入したZVXはダイナミックドライバ使用のイヤホンです。つまり、ZVXはこれまでのモデル名の付与規則に則っていません。
KZ ZVXどんなイヤホン
KZ ZVXは前述のとおり、モデル名がこれまでのKZのイヤホンとは異なっています。しかし、これが何を意味しているのかは、スペックから垣間見ることができます。では、これまでのKZのイヤホンとZVXのスペックを比較してみましょう。
ZVX | EDX | ZST-X | AS16 | |
使用ドライバ | DD | DD | DD+BA | BA |
能率 | 109±3dB/mW | 112dB | 107dB/mW | 105dB/mW |
再生周波数 | 20-40000Hz | 10-20000HZ | 20-40000Hz | 20-40000Hz |
インピーダンス | 25±3Ω | 23Ω | 12Ω | 15Ω |
イヤホンは高価である程、高音域が強くなる傾向があるように思います。上の表で、ダイナミックドライバ1発のEDXの高音側は20kHzとなっています。その一方で、BA搭載のZST-XやAS16は40kHzとなっています。しかし。今回購入した、ZVXはDD一発であるにも関わらず、高音側は40kHzです。
しかし、DD一発でもハイブリッドイヤホンと同等の性能が得られるのでZVXというモデル名にしたと思ます。
KZ ZVXを開封する
KZ ZVXは、KZの安価な製品の標準的な梱包で、中箱に紙製のスリーブが被せられています。数年前まで、安価な製品は、紙箱に本体と付属品が無造作に詰め込まれていました。しかし、最近は安価な製品でも、本体はトレイに、付属品は仕切られたところに整理されています。
付属品は、ケーブルと交換用イヤーピースです。なお、購入はAliexpress内のKZオフィシャルショップで行いました。価格は送料込みで1200円でした。
KZ ZVXを子細に見る
実際にKZ ZVXを手にして感じるのは、ずっしりとした本体と、その質感の高さでしょう。サテン調の本体表面は、価格からは考えられない仕上げの良さです。本体ハウジングは、2ピース構成です。接合部分に僅かな段差はあるものの、バリは全くありません。ステム部分は一体成型のようで、長期間の使用にも耐える耐久性がありそうです。
実際に聴いてみた感想
聞いた瞬間音が良いと錯覚させる音の作りです。低音はかなり強めです。そして、高音も強調されています。この傾向は、メーカーホームページのスペクトルグラフでも明らかです。
巧みな音作りが行われていることがグラフから読みとれます。低音域は、ぐっと持ち上げてあります。しかし、ブーミーな印象を与える200~500Hzあたりは抑えてあります。そして、ボーカルの中心的な周波数である2kHzあたりは持ち上げています。しかし、サ行が刺さる原因である歯擦音を抑えるため、3kHzあたりから上の音圧を少し抑えています。
実に巧みな音作りだと思います。強いドンシャリな音作りで、聞いた瞬間音が良いと感じさせます。しかし、巧みなチューニングで、こもり音と刺さる音を抑えています。これにより、派手な音と、聴き疲れしない音の両立を図っています。このイヤホン、すごくいいです。おススメです。しかし、派手さは無くても、フラットな音がお好みであれば、同じくKZのEDX-Proの方が良いでしょう。
再生の難しい曲で実力を試す
今回試聴に使用した曲はMadonnaのThe Best 00’s Hitsに収録のGive it 2 Meです。この曲をfoober2000のオシロスコープで見るとこんな感じです。
最近の録音では珍しくありませんが、コンプレッサーをかけてフルビット使い切るような録音です。しかも、音域がかなり広いので、強い低音が中音域を汚染したり、ボーカルの歯擦音が刺さりやすい曲です。しかし、このような再生の難しい曲も、KZ ZVXは難なくこなしてしまいます。とてもよくできたイヤホンだと思います。