2SC1815の野良SpiceModelにやられた

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2SC1815の野良SpiceModelにやられました。パーツ箱の中に、2SC1815というトランジスタがありました。寝かしておくにはもったいないので、これを使ってみることにしました。しかし、2SC1815は既に廃版になっているトランジスタです。製造元の東芝では、シミュレーションするために必要なSpiceModelを提供していません。そこで仕方なく、ネットに落ちているSpiceModelを拾ってきました。しかし、これが原因でかなりの時間を浪費してしまいました。

懐かしいトランジスタ

私の少年時代、電子工作に使うトランジスタと言えば、2SC372でした。これは、中学校の技術家庭で組み立てたインターホンにも使われていました。そして、沢山のラジオ小僧を生み出した、学研のマイキット200にも使われていました。しかし、いつの間にか2SC372は市場から姿を消していきました。秋葉原の電気街に行っても、2SC372はありませんでした。そして、代わりに2SC1815が使えると教えられました。

2SC1815も姿を消しました

2SC372に代わり、2SC1815が定番トランジスタの座を占めていました。しかし、そんな2SC1815も時代の波に押し流されてしまいました。製造元の東芝は製造を止めてしまいました。そんな2SC1815ですが、海外に目を向けると互換品は流通しています。アリエクやアマゾンなどの通販では、容易に入手できます。

2SC1815のSpiceModelが無い

電子回路を組み立てる前に、シミュレーションソフトを使うのは常識でしょう。しかし、シミュレーションにはSpiceModelと呼ばれるデータが必要です。SpiceModel無しに、標準的なモデルでシミュレーションすることも可能です。しかし、精度の高いシミュレーションをするには、製造メーカーのモデルが必要です。ですが、既に廃盤製品のモデルを東芝から入手することはできません。

困った時にはGoogleに訊け

本家、東芝からモデルを入手できなければ、ネットを漁るしかありません。そして、あるサイトに2SC1815のSpiceModelがありました。しかし、これが曲者でした。

2SC1815を使った回路を設計する

設計するといっても、今回はこれまで何度も作って実績のある回路を元にしています。これまで使っていたトランジスタBC547,BC557を2SC1815,2SA1015に置き換えただけです。

2SC1815を使用した回路
2SC1815を使用した回路

2SC1815を使った差動増幅回路のシミュレーション結果

これまでBC547を使っていた部分を2SC1815に置き換えました。そして、BC557を使っていた部分を2SA1015に置き換えました。BC547と2SC1815の特性は、それほど大きく変わるものではありません。そして、シミュレーションの結果も最初は良好に見えました。しかし、入力信号を正弦波から矩形波に変えた途端に問題が発生しました。

2SC1815を使用すると発振が起きました
2SC1815を使用すると発振が起きました

回路定数を色々と弄ってもなかなか上手くいきません。そこで、SpiceModelを代えることにしました。幸い2SC1815には互換品があります。そして、目を付けたのは、フェアチャイルド社のKSC1815です。型番を見ても2SC1815と似ています。スペックも瓜二つです。

ご存じの方も多いと思いますが、フェアチャイルド社は既に存在しません。しかし、その権利はオンセミコンダクター社(以下、オンセミ)が引き継いでいます。

オンセミからSpiceModelを入手する

オンセミは流石巨大企業です。フェアチャイルド社から引き継いだ製品の情報もちゃんと公開しています。オンセミからSpiceModelを入手する方法を備忘録として以下に記載します。

手順1、オンセミのHPにアクセスする

オンセミのHPにアクセス

先ずはオンセミのHPにアクセスしましょう。日本法人のHPもありますが、今回は本家のHPにアクセスします。

手順2、プルダウンメニュー”Design”を開き”Simulation/SPICE Models”を選択

Designメニューを開き、Simulation/SPICE Modelsをクリック
Designメニューを開き、Simulation/SPICE Modelsをクリック

手順3、KSC1815を検索

検索窓に2SC1815の互換品KSC1815を入力し、検索を行う。

検索窓にKSC1815を入力し、検索をおこなう

ちなみに、2SC1815のコンプリ2SA1015の互換品はKSA1015です。解りやすいです。

手順4、検索結果にある”PSPICE”をクリックしてダウンロード

リンク"PSPICE"をクリックすると2SC1815の互換品KSC1815のSpiceModelがダウンロードされます
リンク”PSPICE”をクリックするとSpiceModelがダウンロードされます

以上で2SC1815の互換品、KSC1815のSpiceModelがダウンリードされます。この後は、SpiceModelをLTSpiceの回路図に張り付けます。もちろん、標準モデルに組み込むこともできます。しかし、標準モデルstandard.bjtへの組み込みは便利ですが面倒です。回路図への貼り付けがお勧めです。

2SC1815の互換品KSC1815のSpiceModelをLTSpiceに反映するには回路図にSpiceModelを張り付ければよい。
SpiceMidelをLTSpiceに反映する

2SC1815の互換SpiceModelでのシミュレーション結果

2SC1815の互換モデルでのシミュレーション結果
2SC1815の互換モデルでのシミュレーション結果

互換品のKSC1815でのシミュレーション結果です。最終的には、ブレッドボードで仮組しての確認は必須です。しかし、これまでの経験から、野良モデルよりも互換品のモデルでの結果が実機に近いと思います。

いまさら2SC1815?という声が聞えてきそうです。しかし、逆を返すと、それほど2SC1815は広く、そして深く浸透していたのでしょう。電子工作おじさんなら、間違いなく知っているトランジスタです。本家、東芝では作られていません。しかし、互換品が今でも生産されているようです。そして、入手も容易です。秋月電子通商はもちろん、アリエクでもアマゾンでも普通に売っています。一時は、悲観的な声も聴かれましたが、まだまだ電子工作は続けられそうです。