『日本没落を望む7人の反日主義者』

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また経営科学出版の本(今回はPDFでの配布です)を買ってみました。100円という激安価格でした。PDF版ですから送料の負担もありませんでした。出版元の経営科学出版という会社は悪い評判も目にしますが、サブスクさえしなければ安全だと思いますし、出版物に関しても若干の偏りは感じますが悪いものではないとおもいます。逆方向に偏っているいる方にとっては蛇蝎のような出版社だと感じられるとはおもいます。

今回の『日本没落を望む7人の反日主義者』は三橋貴明氏の著書です。三橋貴明氏もやはりある種の偏りを感じさせる言動目立ちますので、彼の言動や出版物に触れるときには補正を心がけた方が良いでしょう。また、本書も結論ありきで書かれているようにも感じます。引用されているデータは出典は明記されているものの、この本の趣旨に沿って集められたものである可能性が高く、裏どりなしに鵜呑みにするのはやめておいた方が良いでしょう。以上がこの本を読むときに心がけておかなければならない注意書きです。

ここまで、ちょっとネガティブなことを書きましたが、本書の内容は中々素晴らしいものと思います。日本がデフレから脱却できていないのはデフレギャップ(本書では生産能力と需要のギャップをデフレギャップと定義しています)が原因であり、中小企業の生産能力が低いわけではなく、度重なる増税によって消費が冷え込んだためであると指摘しています。また、世界銀行の人口減少率を引用し、人口減少が消費の減少の要因ではないと指摘しています。これに関しては見事ロジックだと思います。紙面の限りもあるのでこれ以上の深堀は難しかったのかも知れませんが、税制だけではなく公課についても踏み込んでほしかったと思います。消費増税以上に健康保険料や年金、その公共料金(特に電気料金)は驚くほどの上昇をしていますから。

そしてこれまでも色々とやってくれた竹中平蔵氏も本書で強く批判されています。個人的にはこの部分は全面的に賛同します。過去の派遣労働に関する法律の改正で、製造現場での派遣労働者受け入れが可能となり、その結果熟練労働者が排除される結果となりました。併せて外国人労働者の台頭で賃金は低く抑えられたままに放置されました。政府は最低賃金の引き上げを行いましたが、引き上げたその一部は外国人労働者に流れるわけです。とはいっても、外国人労働者も消費者ではあるので、消費の拡大には寄与するのかも知れません。

そして竹中平蔵氏が提唱するベーシックインカムの危険性にも触れています。ベーシックインカムを簡単に説明すれば、すべての社会保障を廃止する代わりにマイナス課税を導入し、高額納税者の納税分を低所得者に配布する仕組みです。つまり年金も健康保険も生活保護も一切合切なくなるわけです。本書では、公的保険がなくなり、自己防衛のために民間保険に入らざるを得なくなり、そうなったときに海外企業が日本での保険事業に乗り出すことになり、日本は食い物にされるのではないかと説いています。確かに米国のバカ高い健康保険料を鑑みると最終的にはそうなるのだろうとおもわれます。

ここで本書で名指しされた7人の名前を出すのは控えますが(竹中さんは出してしまいましたが)、その方たちが今でもアドバイザーとして自身の後ろにある企業の利益増大のために政府に助言していることに危機感を感じます。もし、この本に書いてあることが事実なら本書がより多くの人の目に触れることを望んでやみません。