『魔王』

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maou伊坂幸太郎氏の作品というと白眉は『ゴールデンスランバー』か『フィッシュストーリー』かなと思います。『鴨とあひるの・・・』は私には少し難解ですし、『グラスホッパー』は暴力シーンがちょっと鼻につく感じで苦手です。

勝手ながら、伊坂氏の作品は結構ブレが大きくって、好きな作品はとことん好きなんだけど、そうでない作品は読み捨てる感じです。今回手に取った『魔王』は軽い感じで読めるページ数の少ない作品という事で『透明ポーラベア』と一緒に購入したものです。

内容は、ある日自分に特殊能力が備わっていることに気が付いた男が、その能力を使って気鋭政治家にある言葉を吐かせようとしたところでその政治家を守る者から攻撃され命を失う。そして時は流れ、別の特殊能力がその男の弟に備わってしまう。弟はその特殊能力を蓄財の為に使う。これから起きるであろう事柄の為に・・・。という含みを持たせたところで物語は終わります。

作品中にも出てくるのですが、本のタイトル『魔王』はシューベルトの歌曲のそれで、父に抱かれる子供こそが特殊能力を備えた兄弟であり、魔王こそが後の首相になる犬飼であると解釈できるのですが、短い作品ですので何となく消化不良な感じは否めず、伊坂氏の作品特有の痛快さは今一つです。伊坂氏の作品の根っこにある輪廻とか因果は十分感じすのですけどね。やっぱり伊坂氏には『魔王』はスケールが足りなかったのではないかと思います。ただ、文庫の表紙絵はすごく良いですね。作品の内容とマッチしています。