『ロクヨン』

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ロクヨン緻密です。登場人物の多さもさることながら、些細な事柄の一つ一つが結末に向けての伏線となっている、見事なミステリー小説です。

二つの誘拐事件が最後にカチリと嵌り一気に結末に向かう構成は見事です。主人公である警察官の三上は結局のところ事件と報道官としての立場、そして過去に在籍した刑事課、警察庁長官による視察の準備に追われ、揉まれ、忙殺され、時に暴走もします。そんな心模様も緻密に描写されています。全ての謎が解き明かされ、敵が実は味方であった下りや、過去に自分の娘を誘拐された被害者の執念、そしてその執念をうかがわせる電話ボックス、そして失踪した三上の娘に対する気持ちの整理には一筋の光が見えます。読後の余韻も気持ちいいです。

警察と報道記者のやり取りがかなりの部分を占めますが、これは『クライマーズハイ』にも通ずるところで、著者が過去に新聞記者を生業としていたことに起因するのでしょう。作品中で「D県」と仮称されている舞台も群馬県であることは容易に想像できます。『半落ち』以来ベストセラーを連発している著者ですが、次の作品が楽しみです。