映画『雪国』

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1965年の映画ですから、制作からyukiguni既に50年を経過した映画です。原作を読んで、この映画を見ると”えっ?”と思う場面があります。それは、原作では冒頭部分、1965年の映画では島村の二度目の越後湯澤行きの部分、「国境の長い・・・」の部分です。てっきり「こっきょう」と読むのだとばかり思っていたのですが、映画では「くにざかい」というナレーションになっています。

さて、この映画ですが、とにかく情緒的で好きです。もともと原作も現代小説とはことなり、読者の想像力に負うところが多いのですが、映画の方も原作にまして島村と駒子の行いはマイルドな描写となっています。これは、次の間のふすまに隠れて帯を締める駒子のしぐさにも集約されているわけですが、いまの映画では絶対にできない表現ではないかと思います。そして、2度目の別れの駅のシーンでは宿の番頭さんが汽車で発ってゆく島村に「またおいでなすって下さい」と言いながら、走り出す汽車を数歩追いかけ、そして深々と頭を下げる。実に情緒的な描写です。近年、こんなに情緒的な映画というのはとんと見かけることが無くなりました。こんな映画をあと何本が見つけ出し、深夜に眺めてみたいものです。