『ハルモニア』

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ハルモニアこれって、オカルトなのか、ホラーなのか、ミステリーなのかジャンル分けが少し難しい本かも知れません。まあ、色々な要素が詰め込まれていると言えるのでしょうね。かなりの長編でありますが、倒述形式ですので何となく話の方向は最初から明かされています。また、これだけの長編でありながら登場人物はきれいに整理されており、とても読みやすい本です。

八ヶ岳のふもとにある高級養護施設が舞台となっており、そこに収容されている由希とチェロ奏者である東野を中心に物語は進みます。言葉に一切反応しようとしない由希が持つ特異能力を伸ばすべく、東野は由希にチェロの演奏を教えることになります。そして極めて短期間にプロとしても通用するほどのチェロ奏者に育っていきます。しかし、その能力には大きな欠点があり、伴奏を付けることを許さず、そしていつの間にか由希は怒りを実体化する能力をも持つことになります。そして、その能力は由希自身にも影響を与えはじめます。

要約してしまうとオカルトチックなのですが、特に東野の心模様は丹念に描写されており、オカルトチックな側面以外の側面も十分に楽しめます。そういった意味では一冊に様々な要素が含まれていますので、ちょっとお得な感じの本です。