『花酔ひ』

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hanayoiひょんな出会いから不倫の関係に陥ってしまう二組の夫婦を描いた小説ですが、この小説、結末が実に暗喩に満ちていていいです。

不倫の関係に陥ってしまう二組の夫婦を中心に話は進むのですが、ここにちょっとしたアクセントを加え、登場人物の一人である「麻子」の迷いに気づき言葉をかける「トキ江」の存在が実に光っています。

トキ江が麻子に語った「七つ下がりの雨としじゅうからの恋はやまない」という言葉が結末に麻子が取った行動の大切な鍵になっています。決して押し付けるわけでは無く、明確な答えを与えるわけでもないトキ江の本心を敏感に感じ取る麻子の心模様が実に見事に描かれています。そして、結末で麻子が取る行動こそトキ江に対して麻子の出した答えなのでしょう。

同じく村山由佳氏の著作である『ダブル・ファンタジー』にも増して過激な表現が多いのですが、過激な表現の裏に隠された心模様、そして影の主人公とも言えるトキ江の一言一言が物語にハリを与えています。そして、物語に大切な情緒や余韻もたっぷりあります。特に最後に麻子が手にする小道具が実にイイです。

過激な表現も多々ありますので、恐らく賛否が分かれる作品と思いますが、登場人物の心模様に焦点を当てて読んでいくとまた別の見方ができる作品と思います。名作です。