『ウーマンアローン』

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womanalone作者の方のお名前は「廣川まさき」さんで、男っぽい名前なのですが実は女性です。

この本は、アラスカの大地に一つの村を作り上げた安田恭輔氏の功績に触れ、安田氏の作り上げた村に行くために作者自身がユーコン川を下って行く過程を描いたドキュメンタリーです。ユーコン川を下るその距離1500Kmをたった一人カヌーを漕いで下るのですが、途中盗難に遭い、出発地点までの移動の為に用意した車は故障し、時に体調を崩し、急流、寒さ、突然の雨や風、そして常に付きまとう野生の熊への恐怖に打ち勝って目的を果たすまでを描いています。

この本を読みながら、googleマップでどのあたりの事が書いてあるのかと探りながら読んでいたのですが、ユーコンフラットと呼ばれる場所はgoogleマップで見ても複雑に水路が絡み合い、まるで網目のようになっています。ユーコン川というと勝手に一本の大河と想像していたのですが、現実はそう簡単では無いようです。

時にシルトと呼ばれる泥が堆積した場所に足を取られ、時にカヌーそのものがシルトの小山に乗り上げてしまって身動きが取れなくなったりと、数々の困難を乗り越えてたどり着いた場所は安田恭輔氏の作り上げた村であるビーバー村。しかし、その村では既に安田恭輔氏の功績は風化しつつあり、作者は寧ろ安田恭輔氏はその功績を持って観光地化されるよりも記憶は風化しても、寧ろその土地にどっかりと根を下ろした村がありのままに存続することを望んでいるのではないかと締めくくっています。

ただ、その村にたどり着くまでの出会いや別れ、そして作者の周りに起きる出来事は時に愉快でもあり、また、アラスカの地で作者を迎え入れる人々の優しさも描かれています。元気と勇気をもらえるドキュメンタリー作品です。