『みぞれ』

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mizore重松清氏の著作の殆どは、家族の絆に焦点を当てたものがおおく、身につまされたりホンワリと暖かくなったり、そんな気持ちにさせられる作品が多いように感じられます。

今回手に取ったのは、『みぞれ』という題名の短編集です。自傷行為に走ってしまう少女、リストラされることの決まったサラリーマン、若いころ演歌歌手だった飲み屋の女将、突然押しかけてきた義理の弟に記念日をめちゃくちゃにされる夫婦、それぞれにちょっと気の弱い主人公が時に泣き、時に怒りを露わにします。ちょっとした日常に潜むちょっとした出来事は結局なるようにしかならない平凡な人々の心模様を丁寧に描いています。

重松氏の作品に最初に出会ったのは、小説誌に連載されていたころの『ビタミンF』が最初です。特別大きな起伏が有るわけでもないその話は妙に身につまされる内容でした。その後何となく遠ざかっていた重松清氏の作品ですが、昨年読んだ『とんび』や『きよしこ』、そして映画化された『青い鳥』を見て居住まいの良さとも違うなんか懐かしいというか暖かいというかそんな気持ちにさせられました。

ちょっと疲れたとき読む、そんな読み方が重松清氏の作品にはあっているような気がします。