『私の名はナルヴァルック』

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nalvalookドキュメンタリー作家の廣川まさき氏の長編ドキュメンタリーの2作目です。一作目の『ウーマンアローン』では、ユーコン川を1500Km下ってフランク安田氏の切り開いたエスキモーの村を訪れますが、本作では捕鯨の村を訪れます。

その村は、嘗てチャリオット作戦という核の平和利用に名を借りた水爆実験の地に近い場所にあります。チャリオット作戦自体は、地元の強い反発で撤回されたものの、そののちに核廃棄物が放射能の漏えい対策も取られぬまま持ち込まれ、放射能に汚染された場所になってしまいます。見方を変えれば、その地に暮らすエスキモーに対する人体実験とも取れる出来事でした。後に、情報公開制度によって核廃棄物の持ち込みは明らかにされ、与論に押される形でアメリカ政府は核廃棄物の撤去を行うことになります。この時、核廃棄物の撤去作業に携わったのは地元のエスキモーであり、放射能が原因とみられる身体の異常により多くの人命が失われます。

そんな歴史を持った地に作者の廣川まさき氏は足を運び、捕鯨の村で寝食を共にする生活を送ります。

昨今の反捕鯨の風を受けてなのでしょう、捕鯨の村でもクジラに向けて銛を放つのは10回に制限されています。しかし、その村の人々は自分たちが一年間食べるだけのクジラを取ると漁を終えます。決して義務のように全ての銛を打ち込むことはしません。

エスキモーの民の直面する、麻薬やアルコール依存、犯罪等のマイナスの面もきちんと取材されています。また、地球温暖化についても、アラスカでは我々とは全く別の見方がされています。日本の地にいては知る事の出来ない極北の地の生活が鮮明に描かれています。