『ふたり』

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ふたり私には映画を見るという習慣が無いのですが、大林宣彦氏の映画は概ね欠かさず観ています。そして、原作のある映画の場合、ほぼ確実に原作を読んでから映画を見るようにしています。しかし、今回手に取った『ふたり』に関しては珍しく映画は何度も観ており、DVDも購入したのですが二十年以上も原作を読んでいませんでした。そもそも赤川次郎氏の作品があまり好きではないという理由もあります。赤川次郎氏の作品を嫌いになったきっかけになったのは『晴れ、ときどき殺人』で、原作も映画もどうにもいけませんでした。そもそも井筒監督の映画が押しなべて嫌いというのも理由の一つとしてあるのかもしれません。

『ふたり』を読んで感じたのは、大林宣彦氏の力量でしょう。原作と映画で異なるのは舞台となった場所が原作では東京(恐らく世田谷か杉並あたり)が映画では広島に代わっていることくらいです。もちろん細かい事を挙げれば色々とあるのでしょうが、話の筋は殆ど原作のままです。

ふたりの姉妹、姉の千津子と妹の美加を描いた作品です。姉の千津子は不慮の事故で妹の美加の前で命を落とします。しかし、千津子は事故の後も美加の中で生き続けます。友人の父の死も、母の治子の入院、そして父の不倫も全て二人の姉妹が一つとなって乗り越えます。そしていつか、美加の中からいなくなってしまった千津子との事を美加は小説として残す決心をします。その小説の題名を『ふたり』とするところで話は終わります。

まあ、この手の入れ子になったような終わり方というのはいくらもあって、『スタンドバイミー』、『奪取』、『重金属青年団』等々枚挙にいとまがないでしょう。くさい終わり方です。個人的には大嫌いな終わり方です。最後の1ページが別の形だったらもっといい作品になるのにと思います。

厳しい言い方をすれば、結末の1ページが無ければと悔やまれる作品です。と、言いつつも映画は何度も見返しているんですけどね。文句をつけつつも好きな作品なんですよ。