ヘッドホンアンプを通すと音は良くなるのか?

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ここ最近でヘッドホンアンプを3台作って、完成品を1台買いました。そもそもヘッドホンアンプっているのだろうか?そして、ヘッドホンアンプを通すと音が良くなるというのは本当だろうか?試してみました。

使用機材はこちら。上段左から120円のMP3プレーヤー177円のMP3プレーヤー、お気に入りで使用頻度が一番高いZishanZ1。そして、下段左から訳のわからん中華MP3プレーヤーその1、訳のわからん中華MP3プレーヤーその2です。

こいつらにヘッドホンアンプをつないだら音が良くなるのか? 試してみましょう。

先ずはイヤホンをつないでもスカスカの音しか出ないダメな奴から試してみたいと思います。少しでもまともな音が出ないかと改造したのですが、全然ダメでした。もっと容量の大きなキャパシタをつなげばよかったのですが、あいにく手持ちのキャパシタにマトモなものが無く、仕方なく0.47μF(これが手持ちの中で一番大きな容量のキャパシタでした)のキャパシタを付けたのですが、改善は見られませんでした。

交換した部品は一般的にカップリングコンデンサというもので、直流成分を遮断し、交流部分だけを流す目的で設置されているものです。直流成分が出力されると消費電力が増えてしまったり、接続する機器に悪影響を及ぼすことがあるため、これらの悪影響を解消するために必須の部品です(カップリングコンデンサを必要としない機器もあるにはあります)。しかし、このキャパシタの容量と接続される機器のインピーダンスによっては低い周波数が減衰してしまい、その結果スカスカの音になってしまいます。

ちなみに、カップリングコンデンサを通過するときにはカットオフ周波数より低い周波数の信号が減衰します。このカットオフ周波数は以下の計算式で求められるそうです。

カットオフ周波数(減衰し始める周波数) f=1/(2πCR) で求められるそうです。

今回使用するイヤホン(trn MT1 ー 安価なダイナミックイヤホン)のインピーダンスは22Ωで、カップリングコンデンサの容量は0.47μF=0.00000047Fですから、R=22Ω、C=0.00000047Fを上の式に当てはめて計算すると、15392Hzという答えがでます。なんと15KHzから下はダラダラと左下がりの周波数特性となります。道理でスカスカな音しか出ないわけです。スカスカの音を何とかするために、C(キャパシタ)を変更するのもう嫌なので、Rを大きくするしかないわけです。

そこで登場するのがヘッドホンアンプなわけです。ヘッドホンアンプの入力インピーダンスは33KΩですので、この値を上記の式に当てはめて計算すると・・・。

カットオフ周波数は10.26Hzとなります。ここまで周波数が伸びればスカスカということはなさそうです。さっそくヘッドホンアンプをつないで音を聞いてみました。

カップリングコンデンサの容量が小さくても入力インピーダンスの高いアンプをつなげればいい音出ます。

結果は良好です。計算通りになっているかどうかを正確に測定する手段がありませんので聴感で判断するしかありませんが、ちゃんと鳴っています。低音から高音までしっかりと出ます。カップリングコンデンサの容量が小さい機器の場合、ヘッドホンアンプの効果は絶大です。

つぎに試すのは177円のMP3プレーヤーです。こいつはいわくつきで、あるべき部品が取り付けられていない状態の不良品が送られてきました。到着早々回路を追って、廃品から取り外した部品を移植してようやく動くようになりました。到着早々の修理が済んでからは快適に使えています。このMP3プレーヤーはそれなりに大きな容量のカップリングコンデンサが搭載されています。容量は100μFです。先ほどの計算式に当てはめてカットオフ周波数を計算してみました。その結果22Ωのイヤホン接続時のカットオフ周波数は72Hzと算出できました。悩ましい数字です。ちょっと下の方が寂しい感じです。しかし、カットオフ周波数より下の周波数がバッサリと遮断されるわけではなく、ダラダラと減衰する感じです。実際にイヤホンを接続してもそれなりに鳴ってくれます。低音が出ていないという感じはありませんし、明らかに低音が弱くなっている印象も受けません。

あまり不満はないのですが、ヘッドホンアンプに接続してみましょう。

計算上カットオフは72Hzなのでそこそこ下まで出ているので、ヘッドホンアンプは無くても良いかも。

実際にヘッドホンアンプありと無しを比較してみましたが、「いわれてみれば低音が豊かになったかも知れない」程度の効果しかありませんでした。

次に試したのはZishanZ1です。非常にシンプルな構成のMP3プレーヤーで、出力部分は2回路入りオペアンプ1個で左右チャンネルの増幅を行うChuMoy形式のアンプとなっています。また、オペアンプはソケットに設置されていますので、差し替えることが可能です。私はドライブ能力の高い日清紡マイクロデバイスのNJM4556に差し替えて使っています。今回使用しているヘッドホンアンプは、ChuMoy形式ではなく、一つのアンプで増幅を行い、もう一つのアンプはボルテージフォロワで使用し、この二つのアンプの出力を合成して出力としていますので、恐らくドライブ能力は高いはずです。今回使用するヘッドホンアンプもNJM4556に乗せ換えてありますので、ドライブ能力はかなり高いはずです。では、試してみましょう。

ZishanZ1もNJM4556に換装してドライブ能力はかなり高かったためか、ヘッドホンアンプを接続しても効果はありませんでした。

そもそもZishanZ1の方もNJM4556に換装してありましたので、ドライブ能力は高く、このチェックではChuMoyアンプと47アンプの比較ということになります。2つのアンプで1チャンネルをドライブする47アンプの方が能力が高いのですが、イヤホンをドライブする程度なら、より簡易なChuMoy形式のアンプでも十分なのでしょう。

次に試すのは中華MP3プレーヤーその1です。中華にしてはそこそこいいお値段のこのMP3プレーヤー、ずっしりと重量感もあって外見はなかなかいい感じです。音に関しては中庸で、とびきり良くもなければ悪くもないです。特徴のない音です。残念ながら高音部分をちょっと弄ってHi-Fi感を出した所謂高級音楽プレーヤーに比較すると寂しい音です。逆に聞き疲れのしない音質とも言えます。

今回使用しているヘッドホンアンプは音質についての変動要素は少なく、そもそもオペアンプが極めてフラットな周波数特性を持っていますので、上記のようなカップリングコンデンサの問題やドライブ能力に問題が無ければ音が良くなるということは無いはずです。さっそく試してみましょう。

もともと面白味の無い音ですが、ヘッドホンアンプを通してもその傾向は変わりませんでした。

元々つまらない音のMP3プレーヤーにヘッドホンアンプをつないでも結局つならない音しか出てきません。当然ですが、ヘッドホンアンプは魔法の箱ではないことを再認識しました。

次に中華MP3プレーヤーその2です。これは低音が弱く、高音も少し弱い感じです。いわゆるカマボコな感じの音質です。イコライザで低音と高音をブーストしてもまだ足りない感じです。内部回路は不明ですが、音量はそこそこ出るので、ドライブ能力が不足している感じは受けません。これが改善するかどうか、ヘッドホンアンプをつないでみましょう。

低音の落ち込み、高音の落ち込みが減ったように感じます。

結果は良好でした、低音の落ち込み、高音の落ち込みが減ったようです。恐らくカップリングコンデンサが小さかったのかも知れません。高域の不足はドライブ能力が低かったためと思われます。

ということで、5つの機器にヘッドホンアンプを接続して聞き比べてみましたが、効果の大きかったものから全く効果の無かったものまでありました。全体を通して言えることは、ただ闇雲にヘッドホンアンプをつないだら音が良くなるわけではありません。接続する機器の抱える問題点をある程度分析してから使うと良いでしょう。

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