ClassAAアンプの音を決めるのは

Spread the love

ClassAAヘッドホンアンプはユニバーサル基板上での動作まで漕ぎ着けました。実際に使ってみて若干の手直しを行いましたが、総じてClassAA回路の安定性は高く、発生すれば致命的となる発振は一度も発生していません。

使用するオペアンプについてはClassAAアンプの司令塔でもある電力増幅部分に、最初はTL072を使っていましたが、出力が多きくなると動作が変になる癖が出てしまい早々にTL072をNJM4580に変更しました。それ以降回路の定数の検討は行ってきたのですが、肝心のオペアンプの選定を今一度行ってみることにしました。

ClassAA回路では、電圧増幅部に帰還が掛かっていて、増幅度の決定とひずみの消込は電圧増幅アンプが一手に引き受けることになります。そして電力増幅回路は電圧増幅アンプから受け取った電圧に忠実に電力を供給する動作となっています。仮に電力増幅アンプに非直線性があったとしても、その結果は電圧増幅アンプにフィードバックされ、電圧増幅アンプがこれを解消するように動作します。

このClassAA回路の原理が本当に正しく動作しているならば、電力増幅アンプが出鱈目な増幅をしたとしても、電圧増幅アンプがこれをいなしてしまうはずです。試してみましょう。先ずは電圧増幅アンプは大好きなLF353に取り換えました。LF353はJFET入力ですので入力オフセット電流は極めて小さく、またスルーレートは13V/μsとそれなりに優秀で使いやすいオペアンプです。そして、それなりに電力も取り出せます。そして電力増幅部には、こういう用途には適していないTL072(後日偽物と判明)を使ってみました。ClassAA回路の電圧増幅に使うと力不足が如実に発生するオペアンプです。果たしてLF353は非力なTL072が出しまくるひずみをいなすことができるでしょうか。期待せずにやってみました。

電力増幅には不向きなTL072(後日偽物と判明)をあえて電力増幅に、司令塔は使いやすさピカイチのLF353です。

驚いたことに見事にひずみが消えました。TL072(後日偽物と判明)のひずみは出力が小さいときには発生せず、音量大きくすると直ぐにわかるようなバリバリというノイズとなって聞こえるのですが、このノイズが完全に消えました。ClassAAアンプのキャラクターは電圧増幅アンプで決まるということが分かりました。改めてClassAAアンプの設計の巧みさを再認識しました。

調子に乗ってTL072の改良品であるTL082でも試してみました。TL082はTL072(両方とも偽物でした)と同様に重い負荷を苦手とするオペアンプです。

TL072の兄弟分のTL082登場です。TL082もTL072(両方とも偽物でした)と同様に負荷耐性が低いオペアンプです。

TL072の結果で既に判っていましたが、見事に鳴ってくれました。22Ωという重い負荷を与えても例のノイズも出ません。では、周波数特性の良くないNJM4558ではどうでしょうか。NJM4558は設計が古いオペアンプで、その登場は40年以上も前のことです。恐らく特性よりも安定性を重視した設計なのでしょう。スルーレートは1V/μsで、可聴周波数を何とかカバーできる程度の性能です。NJM4558が力不足で増幅できなかった部分を司令塔のLF353がカバー出来るかが見ものです。

NJM4558の力不足を司令塔LF353が補えるのか?

NJM4558単体では物足りなく感じられる高域のキラキラ感もしっかり表現されます。NJM4558のキャラクターは姿を消し、LF353の普通の優等生的なキャラクターが全体を支配しています。

ここまでの検証で電圧増幅アンプが全体のキャラクターを支配することが分かりました。では、最後にスルーレート2000V/μsという驚異的な性能を持ちながらも発振しやすくて使いずらいじゃじゃ馬オペアンプのLT1364に登場いただくことにしました。使いずらさから、買ってはみたものの発振に悩まされて放置されていたオペアンプです。

普通の優等生LF353はじゃじゃ馬LT1364をいなすことはできるでしょうか?

じゃじゃ馬LT1364は発振はしませんでした。電力増幅に勤しむLT1364が発熱している隣でLF353はクールなままです。なんとも対照的な二つのアンプです。

電圧増幅アンプが全体のキャラクターを決めるというClassAAアンプの特性を利用して、例えば電力増幅アンプにLM386のような特性よりも使いやすさ重視で設計された安価で手ごろなアンプを使っても面白いかもしれません。

1件のピンバック

コメントは現在停止中です。