プッシュプルバッファ付きヘッドホンアンプ

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オペアンプだけで作ったヘッドホンアンプの出力不足に悩まされていました。そこで、電圧増幅段にオペアンプを使用し、電流増幅段にはトランジスタを使ったディスクリート構成のAB級プッシュプル回路を使用したヘッドホンアンプを作ることにしました。以前考えた回路に問題点が見つかりましたので、そこを修正して組み上げてみました。

まずは回路図です。こんな感じになりました。

AB級P-Pバッファ付きヘッドホンアンプ

改良点の一つ目は、動作温度によってVbeが変動しQ1とQ2が同時にONになった場合に生ずる貫通電流対策です。貫通電流がトランジスタの許容電流(Ic)を超えた場合のトランジスタ焼損を防止するため、貫通電流を制限するR8とR9を追加しました。

改良点二つ目は、トランジスタの入力電圧をかさ上げするためのダイオードにアイドル電流を流すためのR3とR5を調整しました。約0.5mAをアイドル電流を流すことでダイオードの順方向電圧(Vf)をトランジスタの動作開始Vbe電圧に合わせるようにしました。

改良点三つ目はオペアンプの変更です。当初TL072で設計していたのですが、TL072では今回使用するトランジスタ2N2222のベース電流を賄えないことが判明しましたので、ドライブ能力の高いNJM4580に変更しました。

改良点四つ目は電源電圧です。当初±15Vで設計をしていましたが、使用するトランジスタ2N2222と2N2907の取り扱える電力を超えてしまうことが分かりましたので、±6Vに変更しました。

以上の改良を加えてユニバーサル基板で制作してみました。出来上がったのがコレ↓です。

AB級プッシュプル電流増幅段付きヘッドホンアンプ

この回路では、オペアンプが電圧増幅を行い、トランジスタが電流増幅を分担します。オペアンプへの負帰還は、トランジスタのエミッタ端子=出力端子から取っていますので、電流増幅段で生じたひずみの消込はオペアンプが行うことになります。例によって信号経路上のキャパシタはすべて省略していますので接続する装置には注意が必要です。

実際に動かしてみましたが、オペアンプ二個使用のヘッドホンアンプと比較して、力強さが格段に向上しました。勿論大きな音もでます。これまで、オペアンプだけのヘッドホンアンプでは十分に鳴らすことのできなかったオーバーイヤータイプのヘッドホンも余裕で鳴らすことができるようになりました。

今回は電流増幅段はAB級構成としましたが、そもそもひずみの消込はオペアンプがやってくれるので、電流増幅段はB級動作でも行けるんじゃないかと思います。B級動作にすればトランジスタのバイアス周りは一気に簡略化できます。勿論B級ですからスイッチングひずみは出るはずですが、これも電圧増幅段にフィードバックされますので、オペアンプがきれいに消し去ってくれるはずです。

B級動作なら貫通電流は絶対に発生しないので、エミッタからダイレクトに出力することができます。ヘッドホンではあまり関係の無いことですが、ダンピングファクターも下がるはずです。

ということで、折を見てB級動作電圧増幅段搭載のヘッドホンアンプも試しに作ってみようかと思います。

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