鉄の話

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鉄と言うのは欠点だらけの金属である。手入れを怠れば錆びるし、鍛え方を間違えば脆くなる。しかし、正しく鍛えれば鋼として刀にもなるし、巨大な建造物を支える骨格ともなる。

地球の核を構成する物質の大部分は鉄である。そして、構造物、交通機関、道具の類はかなりの確率で鉄を含んでる。そのくらい鉄はありふれている。そして、鉄無しには生活が成り立たないほど人は鉄に依存している。

嘗て石器時代や青銅器時代が有ったことに想いを巡らせば、現在はさながら鉄器時代と呼べるかもしれない。それほど人の生活に入り込み、依存している鉄は、また、体内にも存在している。

鉄と一言で言っても種類は様々で、構造物の様に大量に使われる鉄はリムド鋼と呼ばれる純度の低い低品位の鉄であり、上質な鉄はキルド鋼とよばれる。低位なものにも高品位なものにもそれぞれにしっかりと用途があり、どちらが欠けてもならない。

鉄には弾性限界と呼ばれるポイントがある。弾性限界を超えなければ何度繰り返し力を加えても鉄はストレスを貯めることはない。逆に弾性限界を超えればグニャリと曲がり、さらには破壊に至る。弾性限界を持つ金属は私の知るかぎり鉄だけである。だから、バネは例外なく鉄で作られる。何度押しても力を除けばしっかりと戻る。他の金属ではこうは行かない。

縫い針を赤くなるまで熱して、冷たい水で急に冷やすと、ポキポキと折れるほどに硬く脆くなる。熱したあと、空気中で徐々に冷やすと、指先でグニャリと曲げられるほどに柔らかくなる。火にかけ、たたき、冷やすことで鉄は鍛えられるが、鍛え方でこれほどにも性質は変わる。

鉄は錆びるが、油という衣を着せ、磨き続ければ錆びない。

そして、鉄はニッケルやクロムとまじわることで錆びなくなる。

交わりもせず、油をまとうことも無く、磨かれない鉄は錆び、そして朽ちてゆく。

どうだろう、鉄はまるで人間のようではないだろうか。