ブルース

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花村萬月詩氏の小説の「ブルース」を数年前に読んだ。当時は既に絶版となっており、本としての入手は古本も含めて出来ない状況だった。現在の入手状況は不明だが、当時は電子書籍のデータとして入手する以外に方法は無かった。当時、盛んに使っていたVisorという端末の小さな画面で読んだ。

話の内容は、洋上のタンカーで作業をする日雇いの労働者の話である。恐らく大部分は創作だと思うが、とにかく人が人として扱われず、それこそ毎日のように命を落とす者が後を絶たない、過酷な環境を描いたものであった。そして、陸に上がればドヤで一日を過ごし、金が有れば酒に浸る・・・そんな日々を描いたものである。

話の中で、主人公に好意を寄せる若い女性歌手がサープラス(軍の払い下げ品)のジャンパーを着ていることが描写されていた。これに影響されたわけではないが、そのころ好んでサープラスの衣類を買い集めたことがある。御徒町にある中田商店には何度と無く足を運んだものだ。

久しぶりにそのころ買ったものをきっぱり出してみたが、実用性と頑丈さだけが売りの無骨な物ばかりで、保温性、快適性、見た目は二の次で、とにかく無骨なものばかりだ。そんな中で、これは良いと思わせるものがスイス軍のフィールドジャケットで、青み掛かったグレーのデニム地の生地で作られたジャケットは街で着ていてもそれほど違和感は無い。ただし、保温性は皆無の作りで、裏地すらついていない。何時着れば良いのか解らないままに、箪笥の肥やしになっている。そろそろ捨てるか・・・。