『春は鉄までが匂った』

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『春は鉄までが匂った』は、旋盤工でありながら作家活動もしていた小関智弘氏の著書です。もう二十年以上も前のことですが、じかに小関さんのお話を聞いたことがあります。小柄な小関さんは、そのときどうやら虫の居所が悪かったようで随分とぶっきらぼうでしたが、そのぶっきらぼうさが如何にも職人という雰囲気を醸していました。

鉄が匂うということは経験が無ければ理解しがたいことと思います。春と言うよりも湿度と気温が上がってくる今時分のほうがより強く感じるのですが、実際に鉄は匂います。特にダライ粉という鉄の削りくずは鉄独特の匂いを発します。実際のところ、いい匂いではありませんが、そんな鉄の匂いが立ってくると季節の変化を感じます。

近所に沢山有った町工場はすっかり姿を消し、そんな鉄の匂いを嗅ぐことが無くなって久しくなってしまいました。